ちょっと聞いてよ

鈴乱

第1話

「ぐぬぬぬ……」


 自信はあった。


 自信を持てるものを、みんなの前にさらしたつもりだ。


『やっぱ……、みんなの感覚と僕の感覚は……違うのかな』


 目の前に数値として出た結果が、容赦なく現実を突きつける。


『あーぁ、見なきゃよかった』


 結果なんて、見なければよかった。


 そうすれば、浮かれた気持ちでいることが出来たのに。


『……ま、この立場じゃ、見ないわけにもいかないんだけど』


 僕がみんなに結果を伝える役。


 役目だから、他に任せるわけにはいかない。


『みんなよく分かってる。よく分かってるよ。僕が計画的に語ってて、他のメンバーが素直に語ってること』


 如実に、結果に現れている。


 評価されているのは、"僕以外"。


『うん……。これでいい』


 僕の本気は、歓迎されない。


 僕の本音は、誰も知らない。


 だって……、僕にも分からないんだから。


『僕を値引いて、みんなの価値が高まるならそれで十分。組織は……ダメな奴のひとりふたりいてこそ、成り立つ』


 みんなが成果を出すためには、誰かが『できない奴』の烙印らくいんを押されなくちゃいけない。


 だったら、僕がそれになる。


 普通の役には飽きてしまったから。


 僕が飽きずにここにいるためには、少しばかり刺激的な役が必要だから。


『さぁて、どうやって報告しようかなー』


 いかにもダメ人間に映るように。


 いかにも何も考えていない人間だと思われるように。


 見事、演じてみせるさ。


 完璧に、僕の役割を。

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ちょっと聞いてよ 鈴乱 @sorazome

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