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私はまた夢を見た。


いつもの町の夢とは違っていた。

暗がりの中で、私は階段に立っていた。


──昨夜、目覚めた段だと直感した。

まるで夢が途中から再生されているようだった。


私は迷いながら、もう一段、足を下ろす。

コツ、と硬い音が響く。

五段、六段、七段……。足音が深く吸い込まれていくようだった。


途中、ふと背後を振り返ったが──

昇ってきたはずの階段は、暗がりに沈んで見えなかった。


目覚めたとき、体の奥に、重たい倦怠感が残っていた。


その朝、私は台所でコップを落とした。

いつものガラスのコップ──だったはずなのに、ザラついた石のような感触がした。


外に出てみると、空が白く霞んでいた。

天気のせいかと思ったが、空だけでなく、建物も、電柱も、全体的に色味が浅い気がした。


通勤路でいつも見る公園の木々が、少し背が高くなっているような気がする。

交差点で目に入ったコンビニの看板──何も変わっていないのに、「こんな色だったっけ?」と思った。


それらの違和感を、私は口に出せなかった。

他の人には何も変わっていないように見えているのかもしれない。

それに、私自身も、どこまでが記憶通りだったのか自信が持てなかった。


夜。ベッドに横になりながら、うっすら思った。


これは夢の中が現実に滲んでいるのか──

あるいは、現実そのものが、少しずつ夢に取り込まれているのかもしれない。


そしてまた、夢の中へと降りていく。

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