4
私はまた夢を見た。
いつもの町の夢とは違っていた。
暗がりの中で、私は階段に立っていた。
──昨夜、目覚めた段だと直感した。
まるで夢が途中から再生されているようだった。
私は迷いながら、もう一段、足を下ろす。
コツ、と硬い音が響く。
五段、六段、七段……。足音が深く吸い込まれていくようだった。
途中、ふと背後を振り返ったが──
昇ってきたはずの階段は、暗がりに沈んで見えなかった。
目覚めたとき、体の奥に、重たい倦怠感が残っていた。
その朝、私は台所でコップを落とした。
いつものガラスのコップ──だったはずなのに、ザラついた石のような感触がした。
外に出てみると、空が白く霞んでいた。
天気のせいかと思ったが、空だけでなく、建物も、電柱も、全体的に色味が浅い気がした。
通勤路でいつも見る公園の木々が、少し背が高くなっているような気がする。
交差点で目に入ったコンビニの看板──何も変わっていないのに、「こんな色だったっけ?」と思った。
それらの違和感を、私は口に出せなかった。
他の人には何も変わっていないように見えているのかもしれない。
それに、私自身も、どこまでが記憶通りだったのか自信が持てなかった。
夜。ベッドに横になりながら、うっすら思った。
これは夢の中が現実に滲んでいるのか──
あるいは、現実そのものが、少しずつ夢に取り込まれているのかもしれない。
そしてまた、夢の中へと降りていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます