3

私は町を歩いていた。


昼間の夢だった。太陽は出ていて、風もある。

でも、人影はひとつもなかった。

通い慣れた商店街も、線路沿いの住宅地も、人けのないまま、音もなく続いていた。


初めはただの変な夢だと思っていた。

でも、それが何度も繰り返されるうちに、私は夢の中でも“探す”のが日課のようになっていった。


これまで訪ねたのと同じ場所を、夢の中でも歩いて回る。

けれど、現実と同じように、どこを探しても“それ”は見つからなかった。


けれど、ある夜。

駅前の歩道橋を渡っている途中、私はふいに足を止めた。


渡りきった先の階段の下が、妙に深く見えたのだ。

違和感の正体はすぐにわかった。

通常なら十数段で地面に続くはずの階段が、その先も、さらに続いていた。


コンクリートの階段は、黒く沈む底へと降りていた。


私は立ち尽くした。

その様子は、あの噂にある“降りてはならない”階段そのものに思えた。


地面と同じ高さまで降りてから立ち止まった。


「まあ、夢だしな……」

自分に言い聞かせるように、そう呟いた。


意を決して──

私は、ゆっくりと足を踏み出す。


一段、また一段。

三段ほど降りたとき──ふいに世界が滲んだ。


目が覚めると、朝だった。

足が重いような、どこか引きずられるような感覚が残っていた。


窓の外の町が、ほんの少し──ほんの少しだけ、違って見えた。

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