るきふぇるさん

青月 日日

るきふぇるさん

彼は、るきふぇるさん。


 実は彼、とても真面目で、すごく立派な天使です。

 収穫が増えずに困っている人々がいると、土の作り方や畑の上手な使い方を教えてくれます。

 彼の教えどおりにすると、収穫が増えて、みんなが豊かになりました。


   神様は、微笑んで見守っています。


 でも、るきふぇるさんは少し、困ったちゃんだったのです。

 豊かになった人々がきれいな服を着て、おいしい食事をしているのを見て、


「もっと質素に、倹約しなさい」


 お説教を始めました。


   神様は、微笑んで見守っています。


「たまには息抜きも必要だよ」


 仲間の天使たちがと言っても、


 るきふぇるさんには伝わりません。


「完璧な世界のためには、もっと質素に倹約しなければならない」


   神様は、微笑んで見守っています。


 あるとき、悪魔に唆されたひとが、賭けのカードゲームをしているのを見て、

 るきふぇるさんは怒って、世界中のカードを燃やしてしまいました。


   神様は、微笑んで見守っています。


 人々は、だんだんと、るきふぇるさんから離れていきました。

 るきふぇるさんは、神様に尋ねました。


 「私がこんなに頑張っているのに、人々はどうして私の言うことを聞かないのでしょうか?どうして私から離れていくのでしょうか?」


   神様は、微笑んで見守っています。


 るきふぇるさんは、がっかりしながらも、思いました。


「もし、あくまがいなければ、人々は離れることはなかったのではないか?」


 そこで、るきふぇるさんは神様に聞きました。


「神様はどうして、あくまを消してしまわないのですか?」


   神様は、微笑んで見守っています。


 るきふぇるさんは、さらにがっかりして、立ち上がれなくなってしまいました。




 どれくらいの月日が過ぎたのでしょうか。

 ある日、ふと気が付きました。


「神様は、人々を愛している。神様は、あくまも許している。それが、完璧な神の国を作るための計画なんだ。」


 神様が、すべてを愛している。

 人々も、あくまも、すべてを愛している。


 そして、誰よりも神様を愛している、るきふぇるさんは、思いました。


「神様が悪魔を愛していることを、人々に知られるのはまずい。だから、私が悪魔を愛していると思わせることにしよう。」


 るきふぇるさんは、夕暮れの向こうから、悪魔たちと人々を優しく見守っています。


   神様は、微笑んで見守っています。

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るきふぇるさん 青月 日日 @aotuki_hibi

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