生命線
ツルギ
第1話 憂鬱と鬱憤晴らし
教室の窓にて、少年2人が戯れている。
2人の視線はだだっ広い運動場。
空は暗雲が広がり、
周り一体を見回すと、
土砂降りの雨が地面に降り注ぐ…
今の2人によく似合っている。
谷口秀哉という少年はとても臆病だった。
2007年 ○月○日
幼い頃、秀哉は虐められていた。
いじめっ子は
「やめてよ!!」
という秀哉を、不気味な笑みを浮かべながら痛めつけていた。
「やめるもんか!はははっ!
お前みたいな弱っちいやつをいじめるのは
楽しいなぁ!!!」
そう言って、
殴ったり蹴ったりとやりたい放題している。
その光景を、周りのクラスメイトは
自分は関係ないと言い張るような目で見ていた。
被害者になりたくないからだろう。
家に帰れば状況は変わると普通は思うだろう。
だが、どうやら違うようだ。
一度秀哉が母親に反抗すると、
母親は軽蔑するような厳かな目で
「いい加減にしなさいよ!!
なんでお母さんの言うことが聞けないの!?
それでも私の子供!?」
と怒る。
いくら反抗したとはいえ、
母親も母親だ。
「…ごめんなさい。」
秀哉は素直にそう謝ったが、
母親は冷たい態度を変えず
「…もういいわ、出ていきなさい。
ここに貴方の居場所なんてない。」
と言った。
だが、秀哉には父親の存在があった。
母親にやり過ぎだと叱ったり、
母親が暴力を振るうのを止めたり、
その行動一つ一つが、秀哉の救いだった。
だが、父親は…
2024年 9月16日、
結婚記念日の日に…
轢き逃げ事件により、亡くなってしまった。
「お父さんっ!お父さんっ!!
しっかりしてよっ!!!!
お父さん!!!!
お父さぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!」
父親を轢いた車はすぐさま逃走、
今現在も犯人は捕まっていないらしい。
秀哉は
「その車は、母親の車とそっくりだったよ!」
と、テレビ中継をしている人達を
涙を目に溜めながら見つめ、話した。
中学生になっても高校生になってもいじめは続き、
友達も作れなかった。
そして今、教師以外誰も居ない学校に行き…
自殺をしようとしている。
その隣にいる生徒は謎の少年。
名前は松永依鶴。
初対面だが、
話し方が父親と似ていて話しやすかったそうだ。
そして2人は窓を見つめ、
2人きりで話している。
「依 んで今、ここに立っていると。
「秀 …そう、だね。」
「依 君は怖い?」
「秀 何が…?」
「依 わかるだろ、それぐらい!」
「秀 あぁ、そういう事か。
…それはもう、怖いよ。
心臓が震える程…
でもね、今までされた事と比べれば案外楽かも。」
「依 そうか。
んで、どうする?」
「秀 どうするもこうするも、
道は一つしかない。
今見えてるものしかない。」
「依 …好きに選べばいい。」
そう、依鶴が言うと…
秀哉は窓の近くから消えた。
下へ、下へと…
勢いを上げながら、
…その時、生命線は動いた。
慈悲深い神様の粋な計らいで。
秀哉は酷く落ち込んでいる。
死ぬ事が出来なかったのだから…
でもこれは、
神様の助力で助かった命と言っても過言ではない。
と、思ったのだが…
何か違う。雰囲気が違いすぎる。
これは戻ってはいない_
別世界に飛ばされたのだ…!!
「秀 ってか、今更だけど…
君誰?」
「依 …本当に今更だな。
まぁいい、自己紹介しなければ
何も分からずじまいだからな。
…俺は高校生じゃないはずが、
未だ高校生というただの少年。
名前は依鶴だ。」
「秀 依鶴…いい名前だね。」
「依 君は…ヒデヤだな?」
「秀 …えっ?何で僕の名前を知ってるの?」
「依 君の1年前までの先輩だからだ。」
「秀 …なるほど。
でも、先輩だったら…」
「依 何だ?」
「秀 いや、なんでもないよ。」
「依 そうか。」
つづく
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