認定外スキルの神子は野に下る
草薙 栄
00.隠れ里の異質な子
00.隠れ里の異質な子(1)
その集落には神が下りる
異世界のことではない。今よりちょっとだけ昔。バブル崩壊などと言われていた時期の日本がこの話の始まりの時間軸だ。
古からこの日本という国は
その人の大事な場面や人の生死にかかわる時など、勝手に思い出して勝手にお願いする。それが最近の日本人だ。
ただ、集団の上に立つものにとっては、未だ
それは国などの機関にも言えることで、「政教分離」が現代国家で当たり前になっているのだが、アメリカ大統領は宣誓する際に聖書を手に誓うように、宗教団体が国家の決定に横槍を入れる権限をなくすだけのことで、精神安定のために心の片隅に人知の及ばないものへの何かしらの信心はあるようだ。
日本の国でもそれは未だに信じられている。
古よりそういう需要に応えてきたその集落は、未だに「隠れ里」として存在していた。
集落の名は「
この「夢先神社」の神子は、その辺の神社の一般人がバイトでやる巫女さんなどとは違う。本当に神から何かしらの力をもらったスキル持ちだ。だから「長老会」は神子が権力者に連れ去られたり、いいように利用されることを警戒して、神子と外の者が勝手に会うことがないように管理した。
そして、十二家とその分家に生まれたが神子にならなかった子ども達は、神子を守る盾になり、また依頼が今いる神子にできるかを判断する調査員として、「密偵」の
***
「まったく。台風1つ移動させるのだって大仕事なのよ。簡単そうに受けてくるけど」
そう文句を言いながら、夢先神社の
神子の力は
明るくきっぷの良い眞白は長老会の男衆から「お天気屋」などとからかわれているが、天候を変えるほど気圧に影響を与えられる力の強い神子だった。
今回は台風が思ったよりも日本列島に多く訪れそうなため、農業に打撃をこれ以上与えたくない上の方からの依頼で、台風の進路を1つ
「夢先の杜十二家」は、先の大戦でも国の裏方からほぼ強制的に協力を求められ、まだ子どもだった眞白も参加していた。広島に前代未聞の爆撃があった後、小倉などの軍の重要拠点上空へ雲を流したが、残念ながら次の実行阻止はできず今の歴史がある。眞白にとっての嫌な思い出だ。もう戦争などに手を貸したくはない。日本の国が憲法で戦争を放棄していることがありがたかった。
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