魔光烈閃ブレイブリッツ

飯田沢うま男

幕開け

第1話 虚無の影と二人の少女

 夜の街に、冷たい風が吹き抜ける。月明かりが淡く照らす静寂の中、どこからともなく不気味な囁き声が響き渡る。それは、闇の底から這い上がってきた妖魔“ヴォイドール”たちの気配。彼らは人々の心の隙間に忍び込み、負の感情を糧にして成長していく。いつしか、その存在は街全体に影を落とし、混乱と恐怖が広がり始めていた。


「また、出てきたわね……」


 その声の主、夜野珠妃やの たまきは、夜空を見上げながら静かに呟いた。長い黒髪が風に揺れ、彼女の鋭い眼差しが闇の奥に潜む妖魔の気配を捉える。


「行こう、優希。」


 珠妃の隣に立つ少女、日織優希ひおり ゆうきは、頷きながら手を差し出した。彼女の表情には、微かな緊張が漂っていたが、その瞳には強い決意が宿っていた。二人は幼なじみで、いつも支え合ってきた。しかし今、彼女たちはただの少女ではない。ブレイブリッツ──闇に立ち向かい、人々を救うために戦う魔法少女としての運命を背負っている。


「スパークルヴァラー、ディスガイズ!」

 優希と珠妃が同時に叫ぶと、二人の体が光に包まれた。鮮やかな光が彼女たちを包み込み、煌めく装いに変わる。優希は白銀の鎧をまとい、珠妃は闇をを糧にしながらも闇を切り裂く漆黒の刃を手にしていた。二人が揃ったとき、その力はさらに増幅し、強大な敵にも立ち向かうことができるのだ。


「ヴォイドールを浄化して、この街を守る!」

 優希が前に進み、珠妃が後ろから彼女を援護する形で、二人は妖魔の気配へと向かっていった。ヴォイドールの影が、徐々にその姿を現す。巨大な闇の塊に形を持たせたようなその怪物は、不気味な笑みを浮かべながら呻く。


「私たちが止める!」

 優希が叫び、魔法の光を込めた剣を掲げる。珠妃もまた、闇の刃を構えた。


 二人の魔法少女“ブレイブリッツ”の戦いは、今、幕を開ける。

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