幾つもの脚本が現れます。舞台劇の脚本。高校で発生した事件へ釈明するための脚本。事件を解明するために潜入する人物が身分を偽るための脚本。そして殺人事件を起こす脚本と事件を隠す脚本。
脚本です。意図を持って書かれました。脚本と意図の両方を暴くのが事件捜査でありミステリー小説です。本作は推理ガチ勢には応えられないかもしれませんが違う点に主眼があります。
一つ、また一つ、謎が解ける度に広がる驚くべき光景と立ち上がる新たな謎。見える景色は、滑稽で、哀れで、悲しくて。
人とは如何なるものなのでしょう。見る角度によって全く別の姿が見えてきます。
ただ、一貫する主題があります。人は幸せを来世に託すことしかできないのか、それとも現世で幸せになれるのか、思いと現実がせめぎ合います。
何れの脚本も、何の意図があって書かれたのか。見えてくる意図はドラマとなり読者の胸を打ちます。
ある学校で受け継がれている、『心中姫』という演劇。
その劇でカップルを演じた二人は結ばれるというジンクスがあったのですが……。
学園祭の日に、本当に心中事件が起きてしまったのです。しかも先生と生徒の。
これだけでもショッキングなのに、その後学校では次々と良くない事が立て続けに起きていって、先生も生徒も苦しい思いをしていました。
そんな学校内で起こっている事件を解決するべく呼ばれたのは、臨時教師の辻村琥太郎先生。
実は彼、先生というのは仮の姿。正体は探偵で、事件を捜査するために学校に来たのでした。
そしてそんな辻村先生とバディを組むのは、元々学校にいた3年生の学年主任、野々宮陸先生。
辻村先生が来たことで、旧友だった二人は偶然再会。
しかしこの二人、ただの友達ではなく過去に付き合っていた経験が。
そんな訳ありバディは、はたして心中からはじまった事件の真相を解明できるのか!?
アウトローな感じの辻村先生と、真面目な雰囲気の野々宮先生。
性格の違う二人で一見するとアンバランスですけど、これが実にいいのです!
元恋人の男性同士。この関係を周りには秘密にしながら捜査をしていくわけですけど、危うさとハラハラがあり、読んでいくうちにこのバディの魅力に引き込まれていきました。
怪しい雰囲気の漂う、学園ミステリー。
生徒達の平穏を取り戻すため、頑張れ先生探偵!
とある高校の学園祭で、何年も前かずっと演じられていた、『心中姫』という劇がありました。
タイトルからして悲恋の予感たっぷりですが、いつしかすっかりその学校の伝統に。劇のメイン二人を演じた人たちは結ばれるなんて噂までありました。
ですが去年は、演じられることなく終わってしまう。というより、学園祭そのものが中止になったのです。その理由は、劇が演じられる日の朝、先生と生徒が遺体で発見されたから。
事件は二人の心中として片付けられ、それから一年。
表向きは平穏を取り戻しながらも、どこか事件の傷跡が残っていそうな学園にやってきた新任教師の辻村と三年の学年主任の野々宮は、共に事件の真相を探ることに。
学校という閉鎖的でどこか特別な空間で起こるミステリー。
そんな舞台と共に特徴的なのは、メイン登場人物となる辻村と野々宮をはじめとする先生方の、普段生徒たちの前では見せることのない隠れた表情です。
生徒の見本として正しき行動を求められる先生ですが、彼らも一人の人間。悩むこともあれば、どうしようもない後悔や憤りを抱えることもある。人によっては、決して表に出すわけにはいかない秘密を持っている者も。
そんな人たちの集まる学校で起きた心中事件には、いったいどんな真相が隠されているのか。
そして、事件を知る人たちに、いったいどんな影を落としてきたのか。
謎と共に、関わった人たちの心の内を描くヒューマンドラマなミステリーとなっています。
ある高校で伝統的に演じられている劇があった。それを演じたカップルは本当に結ばれるのだという。
が、去年の学園祭で事件は起きた。警察は心中事件として片付けたが、真相は──?
という所から始まる学園ミステリーですね。
事件の真相を追うために雇われた本業探偵の臨時教師辻村と、彼と昔に色々ありそうな学園教師野々村を軸にお話は進んでいきます。
メインの二人が大人なので、ちょっと大人な雰囲気の漂う学園ミステリーになっています。
二人の過去も気になっちゃいますね。
辻村は全身にタトゥーが入っていたり、振る舞いやなんやかんやも全く教師らしくないのですが、彼は本業が探偵ですからね。致し方ない。
片やぱっと見堅物教師の野々村先生も夜の顔はちょっと違っていてね、ドキドキしますね。
本当にあの心中事件は心中だったのか?
読めば読むほど、謎は深まります。
背伸びしたい高校生なんかが読むには丁度いいんじゃないでしょうかね。
大人が読んでも十分読み応えがある学園ミステリーになっておりますよ!!