第9話

攻撃が効いたのか、青い血を撒き散らして悲鳴をあげている。それから急に地面に倒れて動かなくなった。


【目標の沈黙を確認。指示を】


【陰陽師がそちらに向かっている。各々ぞれまで待機。気は緩めるな。何が起こるかわからん】


【了解】


「倒したんですよね?」


絵美の質問に近くにいた秋山が答える。


「気は抜かないで。妖怪っていうのはね、強い奴は幾ら銀の弾を食らっても死なない奴もいるのよ。この世の生物とは思わない事ね」


「詳しいんですね」


「・・・貴女よりはね」


何かを思い出した様に、秋山は真剣な顔で化け物を銃口に捉える。遠藤が無線で連絡を入れると、一番前に立っている白木が生唾を飲んで、一歩近づいた。以前にも化け物を見た事はあるが、これ程の異形の物は見た事がない。少し近くで見てみたいという興味が、化け物との距離を縮めた。爬虫類のような滑らかな皮膚、無数の傷から青い血が流れているのが分かる。


「おい、迂闊に近付くな!!」


「大丈夫ですって」


化け物から目を話して会話した瞬間、化け物が白木の背後に回り、人質に取った。銃を扱い白木の頭に銃口を向ける。


「嘘だろ!?」


白木は銃を落として降参の意志を示す。


「言わんこっちゃない!!」


遠藤は心の中で顔を手で覆い被せながら、銃口を向けると、その場の全員が同じ行動を取った。しかし一斉射撃すれば白木の命はない。膠着状態に陥ったが、光の鎖が急に現れて銃を絡めとり、化け物から引き剥がした。白木も大猿に抱えられて化け物から離される。


「皆さん、大丈夫ですか!!後は我々が処理しますので撤退を!!」


八坂と小波もそれぞれ札と小太刀を構えており、式神の大猿を八坂が操っている。化け物も突然現れた新手を脅威に感じたのか、忌々しい目をさせた後、森の中を駆け抜けていく。その後を、大猿と八坂、小波が追いかけていく。


【状況を報告せよ】


【目標、沈黙ならず。また、隊員一人を人質に取られたものの、陰陽師の協力によって救出。目標は未だ健在で逃走中。我々も追走しますか?】


【後は陰陽師に任せて、A班の状況を確認せよ】


【・・・了解】


それからの捜索でA班は全滅している事が判明。銃の試し撃ちを行った後が見受けられ、遺体には被弾した後が残っていて、悲惨な状態で発見された。遠藤達が森から帰って一夜が明けると、あの化け物がネットやテレビで、人を殺めた未知の生物として存在が拡散されていた。


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