第8話|さつまいもごはんと、ぎゅっとする日
秋の香りと、ちょっと不器用なやさしさを――
「今日、寒くない?」
玄関を開けて、楓が少しだけ肩をすくめる。
日向は笑いながら、小さな毛布を肩にかけてやった。
「じゃあ今日は、さつまいもごはんにしようか」
「……それ、好き」
キッチンに灯る白い照明と、冷たい外気。
そのコントラストのなかで、炊飯器のスイッチがカチッと鳴った。
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今日のレシピ|秋香る さつまいもごはん(だし炊き)
材料(2人分)
* 米 … 1合
* さつまいも … 小1本(150〜200g)
* だし汁 … 200ml(または水+和風だし小さじ1)
* しょうゆ … 小さじ1
* 酒 … 小さじ1
* 塩 … 小さじ1/2
* 黒ごま … 少々(仕上げに)
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作り方
1. 米を研ぎ、30分浸水しておく。
2. さつまいもは皮つきのままよく洗い、1.5cm角のさいの目切りに。水にさらしてアクを抜く。
3. 炊飯器に米とだし汁、しょうゆ、酒、塩を入れて混ぜ、上にさつまいもをのせて炊飯スイッチを押す。
4. 炊き上がったら10分蒸らし、全体をふんわり混ぜてから黒ごまを散らす。
「さつまいもって、甘すぎないけど、じんわり優しいよね」
「……うん。やっぱこれ、秋だなあって思う」
窓の外にゆれる木々を見ながら、炊き上がるのをふたりで静かに待つ時間。
言葉は少なくても、なぜか気持ちは近かった。
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味の感想(by 楓)
ほくほくのさつまいも、だしのやわらかい塩気。
噛むほどに甘みが広がって、なんだかホッとする。
「……これ、ひとくち目で泣けそうになるやつ」
秋の冷たさと、今日のさつまいもごはん。
両方を、ぎゅっと抱きしめたくなるような味だった。
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食べ終わって、食器を下げるとき。
楓がふと、日向の背中に腕をまわして、そっと抱きしめた。
「どうしたの……?」
「んー、さつまいもがあったかすぎて、なんか……ぎゅってしたくなっただけ」
「……そっか」
鍋の中には、もう残りわずかなごはん。
でも、胸の中にはまだ、じんわりあたたかさが残っていた。
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次回は「ミルクティープリンと、初めての“好き”」
やわらかくて、甘くて、口に入れた瞬間にすべてがとける――
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