ベッド

 この寝室を使うのは久しぶりかもしれない。

 実家に帰っていた時はもちろん実家のベッドでリーシアと楽しんでいたし、北の荒野に居た時は前線基地の小さなベッドでテールと楽しみ、王都に帰ってきてからの一発目は王城の豪華絢爛なベッドだった。


「僕、ここの寝室気に入っているんだよね」


「そ、そう……なんですか」


 ここの寝室に置かれているベッドは滅茶苦茶大きくはあるものの、貴族の屋敷たる実家に置かれているものや王城にあるような豪華絢爛な多くの装飾に彩られたようなベッドとはちょっと違う。

 余計な装飾はない。

 素朴で、ただベッドの上だけに集中できるような代物にしたつもり。魔法を使って自分で作ったこのベッドはかなり気に入っている。色々なギミックをつけているしね。


「さっ、寝っ転がって」


「……ぁっ」


 僕は緊張している女性の体に触れ、慣れた手つきでこの世界の人間が着ているずいぶんと脱がしやすい服へと手をかけて脱がせ、そのまま優しくベッドへと寝かせる。

 何故、この世界の女性の服が脱がしやすい設計ばかりになっているのか。

 それは考えない方がいいこの世界の闇だ。決して、レイプするときにすぐ抜けるようにするため、だったりではないと思おう。


「じゃあ、僕も脱いじゃうね」


「……っごく」


 僕の手ですっぽんぽんになっていた女性はジッと、生唾を飲みこみながらゆっくりと服を脱いでいく僕のことを見つめる。


「『浄化』」


 裸になった僕はサクッと魔法で自分だけ身ぎれいにする。


「上乗っかるね」


 それから、僕はベッドへと上がって下で縮こまっている女性の耳を優しく撫でながら言葉を囁きかけていく。


「それじゃあ、最初は何を───えっ?」


 これから、何をしようか?

 そう、聞こうとした瞬間。


「あがっ」


 自分の下にいた女性の口より短刀が飛び出してきたちょうど上にいた僕の首を貫く。


「ごぽっ」


 血が、溢れる。

 首を貫かれた僕はまともに呼吸も出来ず、声もあげられない。


「こぽ……こぽこぽ」


 自分の口より血が溢れ、そのまま体から力が抜けていく。

 体を支えていた四肢が崩れ、そのまま僕の返り血を浴びて真っ赤に染まっていく女性の裸体へと倒れ伏す。


「がぁ……ッ!?」


 その次の瞬間、僕の心臓を背中より短刀で貫かれる。

 首を貫いた女性が、念には念を入れて僕の心臓を貫いていったのだ……これは、本当に駄目な奴。魔法を唱える為の詠唱を告げようにも、口が動かない。

 死を、覆せるほどの回復魔法を無詠唱で唱えるなんて不可能だ。


「……」


 暗闇へと包まれていく僕の視界に映るのは先ほどまで見せていた表情から一転して無表情な女性の相貌───そして、白くなっていく僕の相貌が見えた。

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