第26話


「さあ、いよいよ始まりました! 大天使大会本戦、二日目第二ゲーム!」


 俺たちが長い廊下を歩き切りグラウンドに出ると、昨日と同じアナウンスが響いていた。やがて全員がグラウンドに集合すると審査員の一人がテントの下へとやって来た。


「カメラなどを貰っていない方の出場者様はこちらへお願いします」


 俺が向かおうとした時、ラファエルは何とも言えない表情を浮かべていた。これから何が行われるのか、と心を躍らせて審査員の後をついていく。

 最初の方はテントから出ただけでどこに向かっているかまでは分からなかったのだが、審査員が歩く向きを見ていると見当がついた。テーブルの前に置かれた白いボックス、それは今朝に説明された撮影場所が書かれた紙を入れているものだ。


「皆さんには前から順番にこの箱から一枚の紙を取ってもらいます。資料にもあった通り、まだ中身は見ずにしておいてください」


 俺たちを連れてきた審査員は前の方で言うと次は真ん中あたり、最後に一番後ろで説明をして回っていった。

 審査員の動きを見ているうちに列はどんどんと前へ進み、俺の方へと順番がやって来た。箱の上部にぽっかりと空いた丸い穴に手を入れる。俺はてっきり箱の中はスカスカだと思っていたのだが、予想に反して紙が半分くらい詰まっていた。こんなにいっぱい紙が入っているのに一枚も被りがないなんて信じられなかった。

 ガサゴソと箱の中に入っている紙を掻き分け、底にあった一枚の紙を俺は取り出す。事前に言われていた通り俺は手の中に握られている紙を見ることなくラファエルの元へと戻った。


「お題が書いてある紙を引いてきたんですか。ペアが揃ったらグラウンドに並んで下さいってあの人に言われたから行きましょう」


 ラファエルの言うあの人、というのは彼女が指差している方向にいるスタート音を鳴らす天使だ。今日も昨日とほぼ同じ位置に立ってスタートの時に鳴らす銃の準備をしていた。


「競技者全員の準備が整ったようです。審査員の方、スタート合図はよろしくお願いします」


 アナウンスを聞いた審査員は銃を持つ右手を高く上げて大きな音を会場に轟かせる。音が鳴ると同時にグラウンドに立つ天使全員がそれぞれのペアの手元に注目をした。

 俺も遅れを取らないように深呼吸をしながら先ほど箱から取った紙を開く。その紙を見るためにラファエルは顔を覗かせる。自分が持っている紙には『天界樹第六〇階、守護霊空間/天界』という漢字ばかりが並んでいた。天界樹までは理解することが出来るのだが、それから先はもう意味が分からなかった。


「えっと、ラファ。この場所っていうのは……?」

「これなら私がわかる場所ですね。じゃあ、さっさと行きましょう」


 紙に書いてある場所を見た競技者は続々と下界に行ったり競技場から飛び立っていく。それに混じってラファエルは俺の手を持って空へと飛び立つ。彼女が空を飛ぶ速さは昨日の借り物競走の時よりも遅かった。

 そう考えてみるといつも俺のために飛ぶ速度を調整してくれているんだと思う。数十分ほど競技場から飛んでいくと昨日、障害物競争でも訪れた天界樹が見えてきた。そのまま天界樹の真下まで飛んでいくとラファエルは地に足をつけた。


「ここに着いたらあとは上に行くだけですよ」

「天界樹を登るってことですね」


 俺はそう言いながら初めて天界樹の中へと入る。冷静に考えてみれば樹の中を掘り出して観光名所にするなんておかしいなと思うのだが、今はそんなことを考えている暇はない。

 完全に樹としての機能を失っているのではないかと思うが、ここは天界だ。下界にいた頃の記憶や知識が真っ当に通じると思ったら大間違いである。


「あ、あれっ?」


 俺たちは天界樹の入り口から進み奥の方にあるエレベーターの前へとやって来た。ラファエルがエレベーターのボタンを押すのだが、彼女は気の抜けた声を出す。その声がよっぽど恥ずかしかったのか言った瞬間、顔を真っ赤にして口を押さえてしまう。


「今の聞こえましたか?」

「あーっ、いえ何か言いましたか」


 ラファエルの様子はいつもの冷静さを忘れていた。それに加えて聞き方も変だったため、俺はあたかも聞こえていなかったように白々しい演技をする。普段だったら心を読まれて絶対にバレるような演技なのだが、今回ばかりは違っていた。

 よほど焦っていたのか俺の心を読む隙も無かったのだろう。競技中なのにも関わらずやっぱりラファエルは愛おしく大切にしたい、というような気持ちを抱いてしまう。


「ちょっとー! 海斗くん、何をニヤニヤしてるんですか。早く行きますよ」


 ペチペチと優しく頬を叩かれて俺は現実世界へと戻される。さっきの恥ずかしがっている時の顔を思い浮かべていると、気付かないうちに俺はニヤついていたらしい。

 またもラファエルに先導してもらいながら俺は後をついていく。エレベーターが使えない中、どうやって上まで登るのか疑問に思っていると目の前に映る光景に衝撃を覚える。


「ここから六〇階まで登りますよ!」


 彼女の足が止まった場所、それは上の階へと永遠と続く階段であった。羽を使って楽に登りたい、と思ったのだが階段の横幅を見てすぐに諦める。自分の両手を広げたサイズの一・五倍の大きさが無ければ羽は使えないのだ。

 しかし俺たちが登るべき階段の横幅は見積もっても一五〇センチメートルくらいしか無かった。そういうわけで天界樹の中にある階段を六〇階分登ることなったのである。



「海斗くん、あと三段ですよ! 頑張って下さい」


 二〇分ほどの時間をかけて俺たちは天界樹の六〇階という高さまで休憩無しで登って来た。息切れ一つ起こしていないラファエルに対して俺は足に疲労が溜まり階段に這うようにして登っていた。

 昔、ニュースで東京タワーの外階段が四二階分ほどの高さと聞いたことがある。それを踏まえてみれば六〇階まで階段で登り切るなんて俺も体力がついたものだ。ラファエルと比べてみると俺はまだまだなのだが、

 下界にいた頃を見ると目まぐるしい進化だと思う。先に六〇階へと到着していたラファエルの声を聞き、最後の力を振り絞って階段をやっとの思いで登りきる。


「はぁ、はぁ……やっと着いた」


 あまりの疲労に俺は階段を登り切るとその場に倒れるように座り込んでしまう。


「お疲れ様でした、と言いたいところなんですけど今からやらないといけないことがありますよ。どうですか? 立てそうならもう行きますけど、休みます?」


 ラファエルの言葉を聞いて俺は一つの事実について思い出した。これはまだ一つ目のお題なんだという事に。


「いえ、こんな所で休んでいられません」


 そう言うと俺は地面に手をつき、前屈みになりながら重い腰を上げる。俺はまだまだ続く階段を目にして絶句しつつ六〇階のドアノブに手をかけた。右回りにドアノブを回転させて俺はようやく一つ目の目的地へと到着した。


「うわぁ、こんな場所があったんですね……」


 天界樹六〇階、そこは独特の景色が広がっている場所だ。暖かい日の光が差し込んでいて多くの草木がのびのびと生きている落ち着く雰囲気だった。守護霊空間と紙には書かれていたのも頷ける。


「この全体が映る場所で撮りましょうか」


 六〇階の入り口前でラファエルはスマートフォンを片手に持つと高く上げた。高校生くらいの若い子達がやるのと全く同じ姿の自撮りポーズでツーショットを撮る。カシャッと甲高い音が耳に入ってきた。


「よし、いい写真は撮れました?」


 俺が聞くとラファエルはスマホを見返した。スマホを横に向けて撮影した写真を見せてくれる。寄り添ってピースをする二人の天使、その背景にあるのは守護霊空間。所々白い点が映っているのは多分守護霊であろう。


「私ってこんな感じだったんですね。初めて見ました」


 写真を見た瞬間、ラファエルの横にいる天使は誰かと見間違えるほどだった。髪型は彼女とほとんど類似しており、髪色も同じ雪のような白さだった。そこまでは鏡を見た時などに確認は出来ていたので何ということもなかったのだが、写真内では俺の身長がすごく小さかったのである。

 どれほど身長が小さかったのかと聞かれるとアイラと同じくらいかそれ以下である。だから一日目でラファエルとアリアの言い合いであんな返し方をされたのかとようやく理解出来た。本来は俺とラファエルの背の高さは同じなんだがどうしてこんなに低いのだろう。


「いや、すいません。私がアリアの姿を変える時に想像したのがアイラだったので……」

「そうだったんですね」


 もはや俺が口にするまでもなく、ラファエルは心を読んで返答をしてきた。同棲を始めて一週間くらいの時は彼女の能力はどうなっているんだろうとずっと疑問に思っていたのだが。慣れって怖いものだな。


「はっ! 雑談してる場合じゃありませんでした。早く競技場に戻りましょう」

「あのー、もしかしてだけどもう一回ここを降りるの?」

「エレベーターが止まってるのでね。これしか方法がありませんよ。クヨクヨ言ってないで行きますよ!」


 やや強引に俺の手を取ったラファエルは階段を駆け降りて行った。



「二四番目に戻って来たのは昨日まで総合六位だったラファエルとアリアのペアです! 一番目から天界樹という過酷な場所を引いてしまってかなりの遅れを取りましたがここから追い上げてくれるのでしょうか?」


 一五分という時間をかけて俺は天界樹から降りて、一〇分ほどで競技場へとようやく帰って来た。全部で四つ引かなければいけないお題のうち一つ目なのにも関わらず六〇分以上の時間を費やしており、現在の順位が二四位。

 俺の悪運強さがここで現れてしまい、前日六位とは思えない順位になってしまった。天界樹に登っている時点で薄々気付いていたのだが、まさかここまで差がついていたとは。


「写真の確認をしますので提示をお願いします」


 審査員の前まで行くとラファエルはスマホに入っている写真を見せた。すると審査員は机の上に置かれたスマホの電源コードに何かよく分からないコードを差し込んだ。


「はい。確認を取る事が出来たので次の紙を引いて下さい」


 全く何が行われているのか理解出来ないままスマホはラファエルの元へと返される。俺はすぐ隣に用意されていた箱の前へと移動をして目的地の場所が書かれた紙を取っていた。

 今回はものすごく遅れているということを考慮して一番上にあった紙を選び取った。箱から手を抜いた瞬間から俺は紙を開き始めてラファエルにも見えるように開ききる。そうして急いで引いた紙に書かれていた場所は『なんばグランド花月/下界』とあった。


「ぶっ……」


 名前を見て俺はいきなり吹き出してしまう。まさかの俺が何度も訪れたことのある大阪の劇場が次の目的地であったからだ。面白くて吹き出したのではなく驚きを超えたから俺は吹き出した。


「ここなら分かります! 早く行きましょう」

「おおーっと、これはアリアさんの口から自信ありげな言葉が聞こえて来ました。ここからの逆転に……」


 会場内の実況を聞き終わるよりも前に俺たちはグラウンドに設置された簡易型アンダーホールへと飛び込んでいた。それは簡易型というのに相応しく天界塔のアンダーホールのように落下は長くなかったのだ。黒く大きな穴に入ってすぐ目の前には下界が広がっているというような感じだった。

 時間だけを見てみればこちらの方が圧倒的なのに違いはないが、機能性はやはり天界塔の方が優秀である。天界と下界の空気圧の差によって体が締め付けられるような感覚に少しの間なったからだ。


「うおわっ、ラファ助けてー」


 下界へ来てもう半年経っているのに、まだ羽の使い方まではコツを掴めていない。当然のように下界へと体が完全に入って数秒後には地面に向かって落下をしていった。

 俺はラファエルに対してかなりの声で叫んでいたからか、彼女はすぐに気づく。落下している俺の体をラファエルは優しく包み込んでくれた。

 実はこうしてお姫様抱っこをされている間はラファエルの胸元やら普段は見せてくれない所がガラ空き状態になるので思う存分眺めれるのだ。大会中というのを忘れて脇に目がいきそうになるが、ギリギリのところで一歩踏みとどまる。


「私はどこまで飛べばいいんでしょうか」


 自分の欲と葛藤している俺に質問をされて辺りを見回す。落ちている最中も少し確認が出来ていたのだが念の為にともう一度確認したが結果は同じだった。

 なんと俺たちがやって来た場所は大阪以外でも知られているほど認知度の高い塔、すなわち通天閣の真上だった。頭の中で俺は地図を生成してなんばグランド花月の方向を割り出す。


「あっちに向かって下さい!」


 左後ろ側を俺は指差すとラファエルは一気に前へと進んだ。もちろん彼女は紙に書いてある場所がどこにあるか知らないため、俺が目を凝らして見てみる。ものの数秒で目的地の前へとたどり着いた俺たちはいつにも増して人で賑わっているのを見た。そんな人がたくさんいる場所に降りて当たって仕舞えば、大変な目に遭うのがすぐに分かる。だから俺たちは上空から目的地を真ん中にツーショットを撮る。

 俺たちはすぐにでも天界へ帰るため、事前に支給されていたスティックを取り出す。あの審査員の人がやっていたのと同じように円を描くようにスティックを回した。そうすると書いた円の形で黒い穴が出現したので中へと入る。

 やっぱりこの穴は体が締め付けられるような感覚になり体調を崩すとまでは行かないがそれくらいの気持ち悪さであった。天界に戻るといきなりグラウンドの真ん中に出る。先ほどはグラウンドにはペアが一人もいなかったのだが、今回は他のペアが残っていた。


「次に競技場へと戻って来たのは……おっと! つい先ほど下界に行ったばかりのラファエルペアだ!ものすごい速さで帰って来ましたがちゃんと紙に書かれた目的地に行って来たのでしょうか」


 実況の驚き方や会場の声を聞く限り、下界での撮影は難易度が天界とは違うのだろう。下界の知っている場所がお題として出てくれたため、かなり巻き返せたはずだ。

 もちろん審査員の判定はOKが出たため三つ目のお題を引く。『天界鎮魂施設/天界』と書かれた紙をラファエルに見せると。


「ここから結構近いですよ」

「さあ、次にラファエルペアが引いたのは鎮魂施設! 現在順位は八位まで追い上げましたがさらに追い上げることは出来るのか。今、競技場から勢いよく飛び出して行きました!」


 迷いなく飛び立ったラファエルに俺は精一杯、着いていく。


「実況の人が八位って言ってましたね」

「本当に二四番目って言われた時はおかしくなりそうでしたよ。でもやっぱり下界をあれだけ早く終わらせたのが大きかったです。天界で働いてる天使って自分の管轄外の場所はわからないので苦戦するからコンパスは使うと思うんですけどね」

「そうですね、一回は絶対自力で紙に書かれた場所を手探りで探さないといけないのが大変だと思います」


 俺の場合は下界の知識がある程度は持っているのでサクサク進める事ができる。このアドバンテージを活かして今日の競技で一位を狙っていたのだが、一つ目から大きな遅れを取ってしまった。自分の持つ他の天使との利点は大差をつけるためではなく追い上げるために使っている。勿体ないなと思いながらも自分の引き運の悪さを恨む。

 一〇分ほど空を飛んでいると見覚えのある建物が見えてきた。


「海斗くんにとったら懐かしい場所ですよね。天界に初めてやって来て私と出会った場所なんですけど覚えてます?」

「ああ! そこだったんですか。どっかで見たな、と思ってたんですけど思い出せずにモヤモヤしてたんです」


 二回目のお題で撮影した時と同じように空を飛びながらツーショットを撮る。


「ほら、一緒に撮るんだから笑顔で」


 折角の二人でのツーショットだと思い俺は笑顔を浮かべた。スマホの画面に映っている自分の顔を見ると同時にシャッターボタンを押される。


「撮れたのですぐに戻りましょうか」


 すごい手捌きでしっかりと写真が撮れたかどうか確認をしたラファエルは言う。そうして俺たち来た道をまた戻り出し競技場を目指す。一〇分という長いような短い時間をかけて競技場へと辿り着くと実況が声を上げた。


「おっと! ラファエルペアがもう戻って来ました。先頭を独走状態で走っていたリアニア姉妹、アイラペアへとじわじわと近づいていますが結果はどうなるのか」


 リアニア姉妹ってこの競技でも先頭にいるのかよ。もう何をしても負けそうな気がして気が滅入ってしまう。審査員の確認が取れると俺は急いで箱から最後のお題を取り出す。


「最後はこれ!」


 そこから出てきたお題は『東京タワー/下界』と誰もが知っている場所が書かれていた。


「現在順位は三位! しかし一位と二位はつい先ほどスタートしたばかり。大番狂せとなり第二ゲームで優勝を勝ち取ってしまうのか。見どころはまだまだ終わりません」


 三位にまで登ってきたのかと感銘を受けつつ急いで下界へと向かう。降りた先は大阪通天閣上空、ではなく東京都庁上空になっていた。東京タワーは赤色で目立つ上、そびえ立つビルの中から存在感をしてしている。


「あれ? さっきと場所が変わってるんですけど……」


 珍しく今回はラファエルが疑問を抱えているようだった。


「流石に大阪から東西に飛ぶんだったら二、三時間はかかるからじゃないですかね。せめてもの救済処置ということだと思います」

「なるほどそういう事ですか。完全に盲点でした。教えてくれてありがとうございます」


 東京タワーのほぼ真下まで俺を抱えてやって来たラファエルはスマホを構える。シャッターボタンが押され写真が撮れていることを確認している間に下界へ戻るためのアンダーホールを作った。

 それと同時にラファエルはアンダーホールの中へと飛び込みグラウンドにいる審査員の元へと飛び込む。会場は競技スタート前なのかと疑うほど静かで厳かな雰囲気をかもしだしていた。

 果たして俺たちはリアニア姉妹、アリアペアを追い越して逆転勝利は出来ていたのか。ドキドキしながら審査員の判定を見る。顔色一つ変えずにラファエルからもらったスマホにケーブルを挿す。そして審査員の右側に置いてある判定ボタンが押された。判定結果は◯、すなわちOKサインである。


「素晴らしい成績です! 今日も昨日と同じ順位になろうとしていた所をこのラファエルペアが防ぎました!」


 実況の声が聞こえると同時に会場からは拍手や歓声が巻き起こった。ラファエルと俺は実況から伝えられた結果を聞いて共に抱き合った。


「良かったですね」

「これでまた一歩、優勝へと近づいた気がします。この後も気を抜かずに頑張って行きましょうね、アリア」


 言葉を交わしながらグラウンド中央に建ててあるテントの下へと戻る。ラファエルには座っておいてもらい、俺は後ろに置いてある冷蔵庫から冷水を二本取り出す。


「疲れてるのにありがとう」


 先に椅子に座っているラファエルに水を渡してから俺も着席する。ふぅ、と息を吐きながら背もたれに体重を預けた。


「ラファエルペアと僅かな差でリアニア姉妹が帰って参りました」


 言っている通り僅かな差、ものの数十秒ほどしかタイムは離れていなかった。リアニア姉妹はやっぱりすごい人たちなんだなと感心していると。


「リアニア姉妹に遅れることなんと一〇秒! アイラペアがゴールします」


 俺は椅子に座り、どんどんとゴールインをしていく天使たちの様子を休みながら見ていた。そうして全員がゴールをすると審査員こと、実行委員の人が出場者のいるテントへとやって来た。


「最後に順位発表が実況の方からありますので一度、グラウンドの方へとお越し下さい」


 昨日と同じように出場者たちはまばらでグラウンドへと向かう。皆がグラウンドに集合したのを確認した実況はマイクの電源をオンにした。


「大天使大会本戦第二ゲームが終わりました。ゲーム内容は撮影競争ということで初めて下界と天界を行き来するものとなりました。そんな知識とくじ引きの運が左右するゲームで一位を取ったのはラファエルペアです! 今一度大きな拍手をお願いします!」


 会場には再び俺たちがゴールした時くらいの音量で拍手が巻き起こる。拍手が鳴り止むと実況は声を低くして、ではと言い続けた。


「最終的な総合成績は昨日と同じく夕方のニュースにてお知らせしますのでお楽しみに! というわけで出場者の皆さん、観戦者の皆さん、今日もお疲れ様でした」


 上手いこと実況が締めると、大天使大会二日目は終わりを告げたのであった。

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