(14)かほ - アイツとの思い出なんかいらない
この業界で働きはじめて、何度目の春だろうか。わたしは28歳になった。生活がまた苦しくなり、結局この業界に戻った。アイツとの日々は思い出すことじたい及び腰になる不愉快な記憶だ。アイツに告白されたあの夜も、わたしにはただの仕事だった。心が通じあったなんてアイツの勘ちがい。最後の夜、アイツの名前を口にした。あれはこれが最後、というよろこびの声。アイツの視線なんて、今思い出しても目まいがする。
今またこの業界で働いてる。またアイツみたいな客がまとわりついてくる。アイツに黙って辞めたことで、似たような客を呼び寄せる「のろい」でもかけられたのだろうか。かほの気持ちはわかるよ、なんてセリフで告白してくる男。かほのためならなんでもするよ、なんてセリフをいってくる男。思ってもいないくせに、よくもぬけぬけといえたものだ。そろいもそろって勘ちがいしている自分勝手な男たちに囲まれる日々。
「かほ」という名前は仕事でたまたま名乗っているだけ。それなのに、アイツらにはそのことがわからない。アイツとの日々は、わたしにいったい何の意味があったのだろうか。残ったのは通帳の残高と思い出したくもない記憶だけ。そこから逃れられないわたしの現実が悲しい。
(第1章・完、第2章へ)
(第1章「作品解説」)
https://kakuyomu.jp/works/16818622175437139934/episodes/16818622175599033689(CatGPTって、なに?)
https://kakuyomu.jp/works/16818622175437139934/episodes/16818622175437190031
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