EP13.同行

クロウリーとトルティヤの決闘から2日後。

トルティヤの姿は広大な草原を抜け、トリア帝国へと続く道にあった。

空には雲一つなく、柔らかな日差しが大地を照らしている。

風が心地よく吹き抜け、道端の草が揺れていた。


「…お主、どこまでついてくるのじゃ」

トルティヤが足取りを止め、訝しげに後ろを振り向く。


そこには、赤いローブの青年、クロウリーがいた。

その顔には、疲労の色よりも決意が強く浮かび上がっていた。

彼の瞳は、トルティヤを真っ直ぐに見据えている。


「どこまでも!俺は俺が負けたことにまだ納得してねぇ!だから、お前の強さを見るため、俺はお前についていく!」

クロウリーはトルティヤにそう告げる。

彼の声には、強い不屈の意志が込められていた。


「はぁ?お主は暇なのか…?」

トルティヤは眉間にしわを寄せ、心底うんざりしたような嫌そうな顔をする。

その視線には、明らかな不快感が込められていた。


「暇だよ!!」

クロウリーはきっぱりとどや顔をしながら言い放つ。

胸を張り、自信満々の態度だ。


「…まったく。そこまで言うなら好きにせい。じゃが、ピンチになってもお主のことは一切助けぬぞ。あと、路銀は自分で稼ぐのじゃ」

トルティヤは少しため息を漏らすと、諦めたようにクロウリーの動向を許可した。

彼女の言葉には突き放すような響きがあったが、その顔にはどこか諦めと、ほんのわずかな容認の色が見て取れた。


「ふん。その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」

クロウリーはにやりとした笑みを見せる。

彼の挑戦的な眼差しが、トルティヤを捉えた。


こうして、トルティヤは魔導師であるクロウリーと共に行動することになった。

二人の間には、まだ張り詰めた空気が漂っていたが、奇妙な均衡が保たれていた。


「して、これからどこに行くんだよ?」

クロウリーがトルティヤに尋ねる。


「トリア帝国の首都、フェズグリークじゃ。そこの富豪が魔具を持っているという噂を聞いてのぉ」

トルティヤは次の冒険の目的地を話す。


「富豪が?てか、魔具ってなんだ?」

クロウリーは首をかしげる。


「お主、それも分からずにワシについてこようとしたのか…」

トルティヤは心底驚いたように呆れた表情を見せる。


「え?財宝の一種なんじゃないの?」

クロウリーはトルティヤに尋ねる。


「まぁ、あながち間違いではないが…魔具ってのはのぉ…」

トルティヤはクロウリーに魔具について説明する。


「え!?じゃあ、あの遺跡で俺が手に入れようとしたのが魔具だってことかよ!?」

クロウリーは目を丸くして大きく驚く。

その顔には、今まで知らなかった事実への衝撃と、同時に何かに気づいたような表情が浮かんでいた。


「そうじゃ…ワシはこれを訳あって集めておる。くれぐれも邪魔をするでない。代わりに普通の財宝は山分けしてやる。よいな?」

トルティヤは有無を言わせない強い口調でクロウリーに告げた。

その眼光は鋭く、クロウリーに釘を刺すような圧力があった。


「それでいい。俺はお前の強さを知りたい。それが目的だからな…」

クロウリーはトルティヤの提案を了承した。

それを見たトルティヤはにやりと笑った。


「よし!では、フェズグリークに向かうのじゃ!!」


「あぁ!」

トルティヤの力強い言葉に、クロウリーは頷き返す。


こうして二人はトリア帝国の首都、フェズグリークを目指し、再び歩き始めた。

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