EP10.攻防

「へっ…勝負はここから!粉塵魔法-紅蓮狂乱ぐれんきょうらん-!!」

次の刹那、クロウリーの杖から噴き出した鮮烈な赤い粉塵が、あっという間に周囲の空間を包み込んだ。

周囲の空気は重く淀み、硫黄のような刺激臭が鼻腔をくすぐる。


「ほう…それがお主の三つ目の魔法か。(粉塵魔法か。少し面倒じゃのぉ)」

トルティヤはその光景を静かに見つめ、対処するように魔法を放つ。


「ふん。そのまま爆ぜちまいな!」

クロウリーは両の手に強い魔力を込めると、腕を大きく振りかぶり、その手を赤い粉塵で満たされた空間に向かって突き出した。


「ドーン!!」

次の瞬間、激しい大爆発が起きる。

熱波が周囲を吹き荒れ、近くの草木を焦がしていく。


「へっ…どうだ」

クロウリーは勝ち誇った表情を見せる。

爆煙が立ち込める中、その口元には確かな手応えが浮かんでいた。


そして、爆炎が晴れていく。


「今のは危なかったわい」

爆炎が晴れると、そこには巨大な水流の渦が、トルティヤの体をすっぽりと覆い、爆風を完全に防いでいた。


「水流魔法-蒼き波濤あおきはとう- じゃ…惜しかったのぉ」

トルティヤはニヤニヤとした表情を浮かべ、クロウリーを見つめる。


「くっ…お前、化け物かよ…」

クロウリーが目を丸くする。

自身の自慢の一撃がまるでなかったかのように受け流された事実に、彼は愕然とした。


「もうよかろう…お主の手品は見飽きた。そろそろお終いにするとしようかのぉ」

すると、トルティヤは自身の魔力を高める。


トルティヤが深く息を吐き出すと、その体から濃密な魔力が溢れ出し始めた。

それは、見る者の視線を絡め取るかのような漆黒のオーラとなり、地面に立つトルティヤの肉体からゆらゆらと立ち昇り、周囲の空間を圧迫する。


「いいぜ!やってみろよ!」

クロウリーは挑発的な視線をトルティヤに向ける。


「なら遠慮はなしじゃ。無限魔法-堕天撃滅砲だてんげきめつほう- 」

トルティヤはそう告げると両手に魔力を集約させる。


それは、周囲の空気をピリピリとさせるほどの魔力だった。

魔力の奔流は、大気中の微粒子を震わせ、砂埃が微かに舞い上がった。


「(こりゃあ、何かやべぇな…気を引き締めていかないとな)

クロウリーは肌を刺すような魔力の奔流を感じ取り、周囲の空気が張りつめる感覚に背筋が凍りつく。

目の前のトルティヤから放たれる圧倒的なプレッシャーは、彼のこれまでの経験を遥かに凌駕していた。


「…終いじゃ」

トルティヤの目の前に、灰色の魔法陣が現れる。


そして、そこから黒と白の螺旋状のレーザーが無数放たれる。

その光は、地面に影を落とし、まるで空間そのものを引き裂くかのように見えた。


「こりゃあヤバイな!!閃光魔法-光鉱の護幕ブリリアントカーテン-!」

再びクロウリーの目の前に、分厚く黄色い鉱石でできたカーテンが出現する。


「ガギィィィィン!!」

黒と白のレーザーが、クロウリーが展開した分厚い光鉱のカーテンに凄まじい勢いで叩きつけられ、耳をつんざくような甲高い金属音が草原に響き渡った。

激しい衝撃が空間を揺らし、両者の放つ魔力が拮抗し、互いに譲らぬ攻防が展開される。


「…ほう。これを凌ぐとはのぉ」

トルティヤは感心したようにつぶやき、その表情に微かな驚きを浮かべた。


「へっ…ならこれはどうだ!深淵魔法-冥府の雷ダークボルテックス-」

そう言い放つとクロウリーが右手の杖を振るう。


すると、紫色の魔法陣が現れ、その中から漆黒の稲妻が凄まじい速度でトルティヤに向かって放たれる。

稲妻は大地を這い、空気を焦がすような匂いを伴って、一直線にトルティヤへと迫った。

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