第29話

「…先生」




とりあえず、お菓子は甘い物と決まってると豪語する先生に声をかける。


未だに文句を言ってる綾を綺麗にスルーしながら、「なんだよ」と視線をこちらに向けた。




「これだけ甘い物を摂取してたら、ガムがレモン味でも糖尿になると思います」



「不吉な呪いの言葉を吐くんじゃねぇよ」




いや、だってならないほうがおかしいでしょ。


絶対なるでしょ。


でも相手は先生だし、と眉間に皺が寄りそうになるのを必死に抑える。


そうしている内に、校内に響くチャイムの音。




「あ、お昼休みだー」




それを聞いて、がばっと顔を上げる優斗。


時計を確認すれば、確かにお昼休みの時間になっていた。




「あー、腹減った」



「こんな引き出しの中見たら、バランス取れたモン食いたくなるわ~」




もう引き出しに興味は無い、とでも言うように保健室の扉に向かう問題児。


この変わり身の早さ。


呆然としている私の肩を、陽平がぽんと叩く。


その感覚に、ようやくはっと我に返った。




「お疲れ」




昴が労いの言葉をかけてくれたけれど、口角を上げる自分の笑顔が疲労の色を隠せていない気がしてならない。




「とりあえず、生徒会室に戻ろうか。普通のルートで」




そう言って微笑む陽平の表情に、きっとどれだけ頑張っても裏ルートは見つけられないんだろうなと思った。

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