第12話 四天王、家計を心配する。

 俺の部屋のちゃぶ台の上で、家計簿アプリが無慈悲な赤字を叩き出していた。


 「にいたま〜。それ、ゲームのHPバーじゃないよ? お金のゲージだよ?」


 リンが俺の肩にあごを乗せて、のぞき込んでくる。やたら甘え声だ。


 「分かってる。だから頭を抱えてんだよ」


 「あるじさま……今月も、ギリギリですねぇ……」


 ルルがしょんぼりしながらも、やたら距離近く寄ってくる。甘々なまなざしが逆に怖い。


 「ジルくん。もしお金なくなったら、ボクしかいなくなるまで削ればいいよ? ……大胆リストラってやつ?」


 ルイがにこ〜っと微笑みながら物騒なことを言った。さすが四天王随一のヤンデレ。怖すぎる。


 「削る前提で話を進めるな。全員残す前提で家計を建てなおす。お前らの面倒は主人の責任だからな」


 そのとき、スーツ姿のサクラが帰宅した。


 「ただいま戻りました、主上。今月の収支報告書です」


 きっちりファイルにとじられた資料が、ちゃぶ台にドンと置かれる。


 「……なんで“足の裏収益予測”シートなんてものがあるんだ?」


 「足裏配信・グッズ・イベントの三本柱です。安定した足フェチは、安定した収入源になりますし」


 サクラはさらりと言う。顔はクールだが、説明する時だけは、ほんのりテンションが高い。


 「主上。ここはひとつ、“日常系足フェチ配信”にシフトするのはいかがでしょう」


 「日常系足フェチって何だよ! 勝手に変な新ジャンルを作るな」


 ちゃぶ台の横では、ベビーベッドの中のシャルが足をばたばたさせていた。


 「ぱい……」


 「今は家計の話だからな、シャル」


 勇者は今日も、母乳のことで頭がいっぱいである。


 俺は大きくため息をついた。


 「——分かった。やるか、“日常ギャグ寄りの足裏教”」


 こうして、俺たちのゆるくて必死な節約&配信生活第二章が始まった。

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