第8話 さすが元勇者

 ある日、シャルが魔法を使っていた。

 

 豆電球ほどの小さな光の魔法だったが、あれは確かに魔法だ。


 「シャルよ。どうやって魔法を?」


 すると、シャルはビクっとして転がって、ベッドから落ちて頭をぶつけた。


 「ふぎゃぁぉぉ!!」


 ふ。

 まるで獣だな。


 俺は考える。

 仕組みについては、勇者だけが特別なのではない。


 そして、気づいた。


 もしや、本格的な魔術を起動するには足りないだけで、実は四天王も魔力を使えるのではないか?

 

 シャルはチッパイ(リン)に任せて、ルルを呼び出した。


 「ルルよ。俺の首筋に舌を這わせろ」


 すると、ルルは真っ赤になった。


 「こんな昼間からですか? それにみんな見てますよ? 子作りはもっと、2人だけの時がいいというか。でも、あるじさまが、見られてる方が興奮するのなら、やぶさかではないというか……」


 こいつは何を言ってるんだ?

 人間の舌には、経脈があり、魔力を伝えるのに適している。だから、舌から魔力を放出させれば、あるいは。


 「いいから、舌から魔力をながせ」


 ルルはモゾモゾしてる。


 「はぁはぁ。ごしゅじんたまの汗の味……」


 「感想はいいから、早くやってくれ」


 ルルは渋々魔力を放出した。


 すると、確かに肩のあたりにピリッと電流が走った。


 (おほっ)


 これはいい。

 肩凝り症の俺にはたまらん。

 

 「ルルよ。今日から、毎日30分ほど、俺の肩をなめて電流を流せ。いいな?」


 「あ、あの。毎日は辛いです」


 面倒なだけで大した労働ではないと思うのだが。


 「ん。お前の忠義はそんなものか?」


 すると、ルルはモジモジとした。


 「いや、そうじゃなくて。欲求不満が辛いんです。あるじさま、施術中は、自分のパンツに手を入れることを許してくださいますか?」


 まあ、どうでもいいことだ。


 「勝手にしろ。だが、その前後はちゃんと手を洗うこと。あと、そのまま俺に触れるのは許さん。ベタベタして気持ち悪いし、塩水で感電したらかなわんからな」


 すると、何故かルルは泣いてしまった。


 「わたしの体液がベタベタで気持ち悪いっていわれたぁぁぁ」


 叫びながら、ルルはどこかに走り去った。 


 なんなんだ、あいつ。

 そんなこと言ってないんだが。


 不潔な手で触ったら、ルルが病気になるだろ。それに、ルルが自己感電しても困る。


 俺は親代わり。

 ルルをまもる使命があるのだ。

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