今日も無事な女男爵の領地の話

山田 勝

今日も無事な女男爵の領地の話

私は、アルテシア・ワーダ。女男爵です。


今、私の領地に盗賊がはびこっています。

人をさらい家畜を奪います。

それも、村から離れた家を狙います。

森を住処にし、平野では戦いません。

我が物顔で振る舞っています。



「ここにいる兵は何だい?飾りかい?」

「しかし、寂れた領地だな」


「兵は森林での実戦経験がありません。兵が死ぬのが嫌で・・・盗賊は神出鬼没、おそらく、人魔大戦で出征した傭兵崩れだと思います」


「「「ギャハハハハハハハハ!」」」

「甘い!甘すぎる!」


「ええ、村人が死ぬのが怖くて、怖くて・・」


「俺たちなら余裕だ。森で戦った事があるから」

「それに銃がある。日本の武器だぜ」

「俺たちは銃を召喚出来る」

「そろそろ対人戦闘をしなきゃって思っていたんだ」


「しかし・・・私が冒険者ギルドで依頼したのは、森林に慣れている斥候職ですわ。せめて冒険者がくるのをお待ち下さい。もうすぐ来ますわ」


「あ~!男爵様、銃知っている?銃だよ。勇者の国の武器だよ」


「まあ、いい。この依頼、俺らが勝手に受けるよ」

「得したな。依頼料払わなくてすむ」


「ちょ、ちょっと、お待ち下さい!」

「お待ちしないのです!ハハハハハハ!」



・・・心配だわ。でも、私はやることをやるわ。





☆森


「でも、驚いたよ。サバゲをやっていたら、異世界転移をするなんてよ。宮田、こういうのは詳しいんだろ?」


「ええ、冒険者スタートです。それから、貴族の依頼を受けたり、魔物のスタンビートをおさめて街の人に感謝されたり。そうだ。異世界ミリタリー物って最後どうなるんだっけ」



「まあ、いいだろう、実銃を撃てるのだから、そうだ。あの女男爵に感謝されて、誰か惚れられたらどーする?」


「可愛かったけど、男爵でしょう?最低でも伯爵ですよ」

「金髪がいいな。あの女男爵、黒髪だ。顔つきは日本だとハーフに見えなくもないな」

「男爵か。僕が内政チートをしてあげようかな。でも考えが甘すぎる」


「アハハハハハハハハ、皆、ヒデぇな」

「でも、俺らは4人で一人だ。皆、それぞれ好きな銃を使えるからロマンあるな」


「そうだ。武田さん。作戦はどーする?」

「ああ、中世の盗賊相手に、作戦はいらないだろう。ジャック・チャーチルがいるわけでもなしに」


「ジャック・チャーチル?ああ、あれか、二次大戦で、弓矢で戦ったイギリス軍の奇人か」



「一発撃てば、逃げて行くよ。フォーメーションだけとっておけ」


「「「分かった」」」


「そうだ。夕飯はどこで食べる?」

「昼前に討伐したら、余裕で冒険者ギルドに戻れる・・・ウグ!」


シュン!


「な、何だ。どこから飛んできた!三杉、首に・・・矢が刺さっている!」


「うわ。痛い!」

「三杉!」


「おい、ポーションは?」

「持っていないよ」

「抜いていいのか?」

「どこから、そう言えば、ベトナム戦争で、バーストが活躍したって密林の中では玉の使用が」


「いいから、そんなことはいいから、矢が飛んできた所に撃て!」


ダダダダダン!

バン!バン!


彼らの持つ銃からその特有の銃声が響いた。


「うわ。熱い!薬莢が当たった!」

「間抜け!」


しばらく撃ったが、敵の反応はない。


「やったか?見に行ってこいよ」

「いや、武田さん。三杉は?」

「ああ、運ぶしかないだろう?!だから早くやっつけるんだ!」


その時、彼らの所まで、大声が届いた。



【ア~ハハハハハハ、おい、お前らミリタリーチートだろう?かかってこんかい!カラス頭!】


およそ100メートル先の森林の中に二人の中年の男がいた。

一人は盗賊の頭目だろう。もう一人はローブを羽織っている。魔道師と皆は思った。

実際、自己紹介を始めた。



「俺が盗賊団の頭目だ!」


「撃て!あいつを倒せば帰れるぜ!」


ダダダダダダダダ!

バシュ!バシュ!


しかし、盗賊は倒れない。



「スゲーな。迫力ある~!」


「旦那、ここは水分が豊富だからウォーターボール作れますが、限界がありますぜ」


魔道師は中級レベルである。

全面に、水槽ぐらいの水を浮かせていた。


弾丸は、ウォーターボールに当たると、途端に勢いが消え地面に落ちる。


「そうだな。俺らに集中しているな。いや、しすぎている。頃合いか」


・・・俺は手を挙げる。

すると、四方から矢が奴らに向かって飛んで来る。作戦通りだぜ。


シュン!シュン!


俺の手下は10人だ。どれも歴戦の勇者だ。

3人だけ本拠地に残して、見張りをしていたら、こいつらが引っかかった。


文献通り木の後ろに隠れるように指示を出した。

鉄礫は、木の幹を通らないと書いてあった。



「「「ウワー!」」


ウワーだってさ。これが、ワーダ家の秘宝か。伝説の兵士か?


一人だけ生き残った。


「はあ、はあ、はあ、はあ、そんな。そんな。俺たちはミリタリーチート」



この姿は異世界人か。


「おい、縛ってから治療しろ」

「「「はい、頭目」」」



「やめろ!俺の20式に触るな!」


「ほお、これが伝説の武器、『銃』か。お前、使い方を教えろ」

「頭目、それぞれ違う銃ですね」

「後で尋問する。これで村人を殺して逃げようか。さて、いくらで売れるかな」


「大もうけ出来ますね。これでどんな敵でも楽勝だ!」

「馬鹿、油断するとこいつらのようになるぜ!子供に聖剣を持たしたらこうなる事例だ」



「な、何でお前らが銃を知っている!」


「馬鹿だな。教えるわけないじゃないか?」


しかし、負に落ちない。伝説だと、ワーダ家に伝承される・・・

何だ。ワーダ家は異世界からの子孫・・・およそ40年前に、異世界から銃を持った騎士が現れて盗賊を倒したり。貴族の依頼を受けたりした。


その武器は銃という名で、かなりの殺傷能力を持っている。

まだ、銃はワーダ領にあるとふんで。村人を誘拐して尋問をしているが、口を割らない。


本当に知らないのかと思った矢先、こいつらが現れた。何故だ・・・


「まあ、いい考えるのはやめだ。お前は治療してやる。そして、一生、武器を召喚しろ。働きによっちゃ。女を世話してやるぜ」



俺はポーションをかけようとした瞬間、

バン!


銃声が響いた。


バン!バン!


「グギャ!」

「うわ。腹から腸が・・」


「やばい、伏兵がいたか!」

「ウォーターボール展開!」

「皆、ドズンの後ろに隠れろ!」


バン!バン!


「どこから撃って来やがる。よし、ドズン!このままゆっくり後退だ。森の中に隠れる」


ダダダダダダ!


「何だ。今度は連発か?」


だが、間に合う。しかし、どこに撃ってやがる。


すぐに分かった。

開豁地の岩だ。


バリ!バリ!と削れている。


まさか。


「ウワー!弾が跳ねてやがる・・・」


バン!


俺の腹を鉄礫が貫いた。



シュルシュルシュル~


と何か飛んで来る。


「うわ。何だ。ヒモがついている」

「ヒモから煙が・・」


ドカーン!


その物体は爆裂した・・・まだ、こんな隠し球があったのか。


あれ、手がない。俺は・・・意識を失った。




☆数分後


あの女男爵が兵を引き連れてやってきた。

後方に従うのは投石兵。


女男爵の手には銃を所持している。64式7.62ミリ小銃。

女男爵の両隣には、冒険者ギルドで呼び出した犬獣人とウサギ獣人がいた。



「クンクンクン!もう、匂いはしないよ!」

「あたしは、森中を走り回って、捕まった村人を探せばいいんだね」


「はい、ミミリーさんお願いします。まだ、本拠地に敵の残党がいるはずだわ」


女男爵は生き残りの武田に近づく。


「・・・防弾チョッキを着ていたから助かったのね」


「な、何だ。助けてくれ・・・矢が肩に刺さった。64式か。あれは、あの引き金の反応の悪い。引き金落として、ビョ~ンて感じで撃針が雷管叩いてるイメージがわくって聞いたぞ・・・でも、何で持っている!」



「フウ、盗賊を散らして・・だから待てと言ったのに・・」


「助けてくれ!」


「依頼はしていないわ。村人捜索が優先事項よ・・」


女男爵は銃口を武田にむけた。何の躊躇もなく引き金を引く。


バン!カラン!



「せめて、魂は故郷に戻れますように・・さあ、村人を救いますわ!」


「男爵殿、良いのですか?ご先祖様の故郷から来られた方では?」


「いいのよ。彼を救助したら、それこそ、時間を敵にあげる事になるわ。それに、ここにあるポーションの優先事項は、第一に捕らわれた村人、次は貴方たち、そして、私ね」


「逆にしましょうよ。男爵殿、だから、甘いと言われるのですよ」


「フフフフフ、そうかしら」



私の一族、和田家は祖父の時代に転移した異界の騎士団の末裔。

武功をあげ、領地をもらった。


異世界の知識を継承したけれども、私には武器を召喚する能力を授かった。


でも、巨大な武力、私は父から男爵の爵位をもらい。田舎に引きこもるように言われたわ。


「良い事!!敵を見たら、速やかに私に報告して、私が・・」



「殺すから」



「「「はい!」」」


この日、ワーダ領の森で異世界人4名の死体が発見され、行方不明の村人が見つかった。

と淡々と事実だけ王国に報告された。





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