スマぺ

やってみる

第1話 陶然に

曇り空の日。いつもの電車に乗り込むと座席に座る事ができた。


車内を見渡すと、ちらほらと立っている人もいる。私は習慣的にポケットに手を入れる。あたたかい。安心する存在感がある。


日差しはないのにロールスクリーンが下がり車窓は見えない。

みんな景色に興味ないんだな。

車内の人達は、みんなスマぺと戯れている。


両手で包み込み、その肌触りを楽しむ。

肩に乗せ、耳もとで何か聞いている。好みの歌や話を聞かせてくれる。語学講座やニュースだって。

悩み相談や話し相手もしてくれて、なんだって知っている。


最初にスマぺが現れた時はもっと大きくてオウム返しの鳴き真似しかできなかった。子供のおもちゃだと思っていた。


どんどんと品種改良されていき、小さくなり有能になりあっという間に大人から老人まで連れ歩くのが普通になった。飼ってないなんておかしいと思われる程に。


「ギャギャッ、ギャー」「シュー、サーッ」

喧嘩の声で我に返る。

最近よく起こる騒ぎだ。スマぺは平和的な生き物で飼い主に従順とされる。しかし飼い主が喜ぶ様に変化していくので、敵対する別種になってきているようだ。

中には喧嘩の果てに殺してしまう事も。


ポケットのスマぺが震えている。のぞいてみるとお腹を減らしている様だ。朝ごはんをやってなかった。

寝ていれば2〜3日食べなくても良いが、よく活動させればすぐにお腹を減らす。最近は携帯食を持ち歩く人も多く、能力の上がる特別食に月何万も注ぎ込む人もいるという。


寿命は10年生きると言われる。実際は次々と新しく品種改良されたスマぺが華々しく売りに出され体力も3〜4年で著しく落ちるため、人々2〜3年で飼い替える。体は替わっても精神や記憶は引き継げるのでいいのだと。


私のスマぺは7才だ。もう老年だろう。

しばらくして空腹のため冬眠に入った。

ポケットの布越しにスマぺの存在を確かめ、少しの不安と気楽さを感じる。


またスマぺが居なくなる時は来るんだろうか?人は何かに依存して陶酔してるのが楽で安心だからな。また違う物を作り出すだろう。


相変わらず外は見えない。

単調な揺れに眠くなってきた。

前に座っている人も居眠りを始めている。その手に包まれたスマぺはこちらを見ている。


最近はスマぺ同士で人間の感知できない交流をしているらしい。スマぺは人類を操作しているんじゃないか?もしくは誰かの陰謀?地球外かも。

そんな妄想と微笑みが浮かぶ。


スマぺは愛らしい目でこちらを見ている。その黒々とした瞳孔の奥は計り知れない。


私は耐えられず目を閉じた。











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スマぺ やってみる @yasosima91

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