『ハイビスカスのゆれる頃』は、懐かしい田舎の家、仏間の静けさ、台所の賑わいといった、誰もがどこかで感じたことのある“帰省”の風景が、やさしく心を包みます。家族それぞれの個性がにじみ、母の存在や季節の移ろいが、現実と幻想の狭間にふわりと揺れるように描かれていて、読んでいると自分の記憶や家族への想いまでそっと呼び起こされる気がします。
幽霊や妖怪も自然と物語に溶け込み、どこかメリー・ポピンズのような魔法めいた空気も。静かな祈りや日々の営みの中に、人生の痛みと優しさが柔らかく交差します。
ぜひ、このあたたかな物語を味わってみてください。
出だしの6話までは、ですます調の優しい文体で淡々と美しい情景を描いていて、落ち着いた語り口がちょっとだけ背中をゾクッとさせるが、ホラーというジャンルを感じさせない。
主人公の葉月は視える家系である。妹や弟、息子の海音も、霊が視え、感じることができる。
息子の海音がある日、一反木綿とカエルを拾ってくる。そこから平穏な日常が変化し、その後場面は急展開する。
夕立に遭った葉月とそのきょうだいと息子が廃校の小学校に導かれる。そこはかつて殺人事件が起こった場所。そして葉月は小学校時代にタイムスリップする。
お母さん、まだ生きてるお父さん、生まれたばかりの弟。友達の由美ちゃん。その時代に戻った葉月と家族や友人との日常的なやり取りは、岡山弁だ。大分弁に似通ったところがあり、頭に入りやすい。
物語は、そこでも淡々と普通の生活を描いていく。一反木綿も、常に葉月に寄り添っている。
最後に、現代に再び帰って来る葉月。そして、殺人事件の真相が語られる。
ゆったりとした物語の展開、しかしそこにあるのは家族や友人との確かな絆。多分これがこの作品のテーマであろう。
じっくりと味わいたい家族や友人との絆の物語。読んでみてください!
お盆の頃には、青い空の白い入道雲の様に
何とも言えない郷愁が湧く。
夏の真っ直ぐな日差し。蝉の声、風鈴、
何処からともなく蚊取り線香の匂い。
玄関には仏桑花の紅い花が揺れている。
懐かしい夏の思い出。
仏桑花は、亡くなった人を想う花。嘗ての
優しく心安い日々の中で、少しずつ
時は過ぎて大人になって行く。
心ときめく思い出の欠片を行きつ戻りつ、
今はもういない人たちとの 今 を
共に過ごしながら慈しんで行く、恰も
懐かしいロードムービーを見る様な物語。
優しくて切ない。そして何より愛しい。
あの世 と この世 との陌間に浮かぶ。
まるで魔法にかかって行く様に、或いは、夏の涼風に流されて行く様に。
揺蕩いながら想い巡らせる。
懐かしくも不思議な世界へ。
そして、今へ。
まだ2話までしか読めていませんが、主人公に感情移入すると、胸がキュって締め付けられる。
主人公目線の文体に、ですます調で丁寧に、親切につづられている文使いが、完全に、読者への丁寧さが滲み出て、作者様の心遣いがとてもお優しくて、すごく参考になります。
僕はこの作品、片田舎の避暑地で、開け放たれた大窓と、扇風機で間に合うくらいの暑さの中
棒のアイスキャンディーをひとかじりし、夏の空気に交わる扇風機の風を浴びながら、書籍になったこの作品をじっくり読んみたい。
ふと気づくと、蝉時雨から、ひぐらしの鳴き声に変わる頃
「そろそろ夕飯作らんといかんなぁ? どしよ……めんどくさいからカレーでいいか? 子供たちも好きだしなぁ」
と思いながら、冷蔵庫からジャガイモ、ニンジン、玉ねぎを取り出す。
夕飯終えて、家事とお風呂を終えたら、小さい電気スタンドで続きを読みふけたい…
そんなノスタルジックに拝読したくなる御作品だと感じました。
ながらではダメ、しっかりとお読みさせてください。
orz土下座ぁ!
まるで静かな祈りを聞いているような読書体験でした。
お盆の帰省という誰もが持っている風景のなかに、そっと霊的な気配が滲み込んでいて、
「この世」と「あの世」のあわいが、やさしくたゆたっているのを感じました。
過去と現在、亡き父と子ども、見えるものと見えないもの――
すべてが柔らかく交錯して、「大切なものは確かにここにある」とそっと背中を押されるような作品です。
家族という言葉では語りきれない“連なり”のようなもの。
そして、受け継がれる感受性と、それを穏やかに見つめる母のまなざしがとても印象的でした。
ハイビスカスが揺れる庭の光景が、読後もずっと胸の奥に残り続けます。
夏の帰省、線香の香り、仏前の花。
見えない者たちがそっと家族に混じり、静かに佇むこの家には、「亡き人たち」がいつものように帰ってくる。
見える力を持って生まれた女性・葉月は、母の家に息子とともに帰省する。
祖父、父、そして母の霊たちと、時に会話し、時に手を取りながら、台所に立ち、子どもを抱き、家を守り続ける。
妹や弟、夫、甥や姪。
家族たちの笑い声と、見えない存在たちのまなざしが交差する夏。
そのあわいで響くのは、懐かしい「メリー・ポピンズ」のあの歌。
Supercalifragilisticexpialidocious――
意味なんてわからなくても、子どもたちは笑いながら歌う。
これは、悲しみも、怒りも、愛しさも、
ぜんぶ包んで空に還す、「生きるための呪文」の物語。
『ハイビスカスのゆれる頃』は、お盆の季節を背景に、生きている人と亡くなった人、そして見えない世界とのつながりを、静かに丁寧に描いた物語です。霊感をもつ主人公・葉月のまなざしを通して、家族との思い出や、大切な人を想う気持ちが、やさしく紡がれていきます。時折登場する「Supercalifragilisticexpialidocious」の歌が、物語を明るく支える魔法のような存在となり、現実と幻想をあたたかくつなげてくれます。不思議な出来事が描かれていても、どこか懐かしく、ほっとするような安心感があり、読み終えるころには、心にそっと花が咲いたような余韻が残ります。見えないけれど、たしかにそこにある“気配”や“想い”を、大切に抱きしめたくなる、優しい物語です。
丁寧に描かれた心の揺れと、不思議な存在との邂逅。
自然や土地の記憶、人との繋がり――
本作は、一見穏やかな日常の中に、幻想や不可思議な現象が静かに溶け込んでいて、どこか懐かしく、不思議な読後感をもたらしてくれます。
特に、一反木綿という存在との交流や、黒い塊・羽アリの描写が、自然と人間の境界を曖昧にしながらも、確かな「人の感情」を浮かび上がらせていて印象的でした。
作者さまの近況ノートに載っている、美しい写真たちとも重なり合い、視覚的な余韻まで感じられる素敵な世界です。
現実と幻想が交差するこの世界観を、ぜひ多くの方に味わってほしいと思います。