第26話


ユキナの腕に抱かれたまま、

人形は無表情に揺れていた。



次の瞬間――



その人形がくるりと首を動かした。



そして、まっすぐにレンを見た。



その表情はレンがこれまで見てきた“人形”の顔ではなかった。



わずかに目尻が持ち上がり、唇がほんの少し緩やかに笑ったように見えた。



言葉は出なかった。


逃げ出したいのに足が動かない。



その視線は確かに――“自分”を見ている。



あの人形が、


"ましろちゃん"がくるりと首を動かして――自分を見た――?



その瞬間、レンの全身が震えた。

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