第8話

あまりの迫力にレンは無意識に一歩後ずさった。


その反応がさらに火に油を注いだのか

ユキナは人形をぎゅっと抱きしめて叫んだ。


「どうしてそんな顔するの!? ねえ、言ってたじゃん……“子どもが欲しい”って……! 私、ずっと頑張ってきたのに……やっと会えたのに……!!」


唇が震えていて瞳には涙が滲んでいた。


その顔は“怒り”と“悲しみ”がごちゃまぜになっているように見えた。



レンは静かに深呼吸をした。



――取り乱すな。否定するな。刺激するな。



ユキナがさらに傷つくことだけは避けなければならない。

レンはゆっくりと口を開いた。


「……そうだね、僕たちの子だね」


絞り出すような声だった。

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