第11話 洗礼
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白昼から、魔法学院の敷地全体に悲鳴が響き渡っていた。
華奢な女から大柄な男まで、全員だ。
皆、逃げ惑い、死を予感し、ある人物から死に物狂いで距離を取る。
その人物こそ、Sランク魔法使いメリナだった。
「どうした貴様ら! 魔法学院に入学したエリート共がこの程度か!? たかが女一人倒せずに何が魔法使いだ! 無能共が、雑魚は全員ここで死ね!」
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入学式の翌日、特別入学者であるレイを除き、入学生全員が招集された。
前に出たのは、魔法学院、院長とメリナだ。
院長が告げる。
「皆さん。魔法学院での授業を始める前に、必ず受講してもらう講義があります。皆さんご存知であろう、Sランク魔法使いのメリナ様がお越しくださっています。そして、メリナ様が直々に指導して下さいますから、ありがたく受講するように」
入学生からは歓喜の声が上がる。
しかし表情の暗い者が二人いた。
院長、そして入学式からたった一日で性格が変わり、首輪まで付けられてしまったリリアーネだ。
そして、メリナが前に出る。
入学者を見渡し一言告げる。
「この中で一番強い自信のある奴、前に出ろ」
一同は困惑する。
が、一人名乗り出た人物がいた。
「はい! 僕こそ相応しい」
それは一人の青年だった。
七三に分けた頭髪と整った顔立ちに、清潔感のある装いは如何にも好青年といった印象だ。
「昨日は、偶然首席になっただけのリリアーネとか言う不届きものに邪魔されましたが、実戦経験においては僕がトップかと」
青年は笑みを浮かべながらそう言い、メリナは無表情のまま答える。
「ほう、そうか」
刹那、メリナは青年を一瞥すると、青年の顔面に音速の蹴りを入れた。
「ガハッ……」
青年は泡を吹いて気絶する。
「常時発動の防御魔法も無し、装備も貧弱、なにより弱い。舐めているのか……」
入学生たちは、メリナに対し恐怖を抱く者も現れていると思われるが、メリナは気にせずに続けた。
「私がここに来た理由はただ一つ、貴様らの性根を叩き直す為だ。今日一日かけても良い。私に一撃入れることで出来れば全員合格だ。もし出来なければ、全員即退学……さあ、開始だ。何人で来ても良いぞ」
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こうして、この惨劇が繰り広げられることとなった。
メリナは魔法で嵐を起こし、学院に雷雨が降り注いでいる。
そしてメリナは叫ぶ。
「入学すれば安泰だとでも思ったか? とんだ勘違いをしたものだ! これからは毎日が殺し合いだぞ! 国の最高峰という自覚を持てゴミ共! 死ぬ気で来ないと殺すぞ!」
暴走するメリナを尻目に、一人の人間は希望を失っていなかった。
金髪の少女だった。まだ若く、レイと同程度だと判断できる。後ろ髪を一つに結んだポニーテールが特徴的だ。
そして、彼女は協力者を募ろうと、偶然そばに居たリリアーネに声をかけた。
「ねえ、アナタって首席なのよね? そこそこ戦えるでしょう? ボクに協力してよ」
リリアーネは、根拠の無い安心感を覚え、彼女に名前を聞いた。彼女は笑顔で応えた。
「ボクは、リア。ただの村娘だよ」
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