アサクラヒカリコから手紙が届きました

 小学校卒業おめでとう。

 今、お祖父ちゃんお祖母ちゃんが送ってくれた写真を見ながら書いています。

 小学校生活はどうでしたか。楽しかったかな。

 貴女の書く作文がいつも満点で、担任の先生が褒めていたそうですね。小さい頃から本が好きだった事を思い出します。

 貴女はママが読んだ後も、ずっと本に見入っていましたね。

 しかも絵ではなく文字に強く興味を惹かれて、延々と首を上下に振っている姿が可愛らしかったです。

 将来は太陽系にその名が知れ渡る作家さんになったりして。

 友達は沢山できましたか。

 貴女は大人しいけれど、好きな事に夢中になる子でした。きっと大好きな宇宙の話題で意気投合した友達がいるのでしょうね。

 お祖父ちゃんお祖母ちゃんに入学祝いで貰った琥珀を大事にしているそうですね。

 飴色に艶めく琥珀が貴女にはお星様に見えるのかしら。

 ……今度の返事で教えてね。

 ママはまだ帰れないけど、プロジェクトは着々と進行しています。

 今はもう慣れたけれど、ママが所属する基地はほぼ無人です。

 地球、火星、木星から集められた技師達はいますが彼らだけ。

 指令は遠方にある別基地から送られてくるし、作業員の多くは遠隔操作されたドローンです。

 効率も良いし、文句もないので働きやすい環境、と言いたいところですが、ドローンは会話をする気が全くないので、終始静寂な一日を過ごしています。

 数日や数週間ならまだしも、六年近くもこの状態は流石に堪えます。

 火星や木星では職員の家族の入居が始まっていると聞きました。

  ちょっと羨ましいです。

 あと、一緒にコンビを組んでいる人がいます。

 その人も女性で私と同い年。

 友達になれるかなと思ったのですが、家族の事を話題にした途端、睨まれてしまいました。

 理由わけは教えてくれません。

 仕事をしない人ではありません。むしろドローンより優秀です。

 けれど必要な事以外は口を聞いてくれません。

 ……ごめんね。貴女に知らせる内容ではなかったね。

 今回はこのくらいにしておきます。また次の休みに手紙を書きます。

 愛しい娘へ。ママより。


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