1つのレシピと2つのお茶

乃波ウタ

第1話 ココフの朝

 早朝4時62分。


 まだ蟻もキッチンにやってきていない、まだそんな頃。


 一つのお家にポンと灯りがついた。


 テテテに住むロロのナナは、朝にココフというお茶を飲む。お茶はとってもとっても大事だ。なぜならお茶は、お腹にある火を助けるから。


 ナナは今日もお茶を作る。


 ぼこぼこぼこぼこ


 お湯が楽しそうに沸騰している。ナナはお気に入りの大さじで、ココフをオリーブのすり鉢に入れる。オリーブのすりこぎでごりごりとやっていると、ココフのスパイスが


 ぱちぷちぱちぷち


 砕けて、良い匂いがしてくる。ナナはこの匂いが大好きだった。沸騰したお湯に、すり潰したココフをさっと入れる。シュワシュワと泡になってぼこぼこに飲み込まれて行く。お茶ができるまでの5分間、ナナは鍋を見つめながら深呼吸をした。


 お茶を飲みながら、戸棚のスパイスのチェックをする。もう無くなりかけのココフのスパイス。それとほかに無くなりそうなものもある。


「『ハプのスパイスとお茶とハチミツのお店』で買い足さなくちゃ」


 そこでナナはふと、あることに気がついた。


 いつもは田舎から送ってもらっていたスパイス。良いお店を見つけたから、次からは自分で買うと連絡をした。そして、今日これから初めて自分でスパイスを買いに行く。つまり今日の夜、ナナは初めて自分で買ったココフのお茶を飲めるのだ。


 ちょっと大人になったような気持ちがして、胸がむずむず照れくさい。嬉しくなって

 お腹の火がチロチロと揺れて。ころころと心が歌う。ついついにやけながら、戸棚の瓶をキッチンテーブルに出すと、左奥の方から、見たことがない小瓶が出てきた。

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