月喰む夜、人狼の檻にて

エグジット

第1話

……時刻は午後2時をまわりました。日曜の午後、街はどこか静かで、ちょっとだけ退屈な時間。さて、ここにひとり、急な休みに戸惑う男がいます。彼の名は――拓也。


【SE:携帯の通知音】

「ブゥーン……ブゥーン……」


バイトの汗も乾かぬうちに、彼に届いたのは一本の電話――マネージャーからの“今日はお休み”の連絡だった。

『マジかよぉ……連休なのにヒマじゃん……』

そんな彼の元に、今度は一通のメッセージが届く。


(SE:ポンッ)


『たくや? 今、みんなで人狼ゲームやろうって集まってるの。すぐ来れますか?』


彼は答える――


『ウッス!行きます!


勢いで言ったその一言に背中を押されて、彼はパソコンを開き、初めて“人狼”というゲームに触れた。ルールはシンプル。けれどその奥に潜む心理戦――興味をそそる。


【SE:ドアが開く音】


そして彼は、シャワーも浴びぬまま、店に駆け出した。そこに集うは12人の男女――友人、先輩、マネージャー、そして見知らぬ男。

トランプを囲む彼らの視線の先で、拓也の知らない物語が、今、動き出す――


【SE:ドクン……という心音】


“ようこそ、人狼の夜へ”。

これは、ただのゲームじゃない。信じる者と、騙す者と――

日曜の午後、退屈はスリルに変わった。


【BGM:静かなピアノ曲にフェードイン】


……さて、皆さんは、誰が“人狼”だと思いますか?


【BGM:静かな心音と低い電子ノイズが重なる】


部屋の空気が、重い。

誰もが笑っていたはずなのに、どこか“よそよそしい”。

トランプを配るマサヒコさんの手が、ふと止まる。

藍沢柚葉の微笑みが、少しだけ張りついて見えた。


「さあ、役職はわかったな?」

センパイが低く言う。

その声に、背筋がぞわりと震えた。


俺――拓也の手元には、ただの“村人”カード。

けど、その瞬間、はっきり感じた。


この中に、“本物の怪物”がいる。


一巡目、話し合いが始まる。

ピクミンが軽くボケて笑いを取る。

チクニーザウルスが冗談めかして「俺、人狼な」と言ってみせる。


だが、笑いがどこか空回りしていた。


二巡目。

一休が口を開いた。


「母ウニが、さっきから一度もみんなの目を見てないんですよ……。これは、おかしいでしょ?」


その瞬間――母ウニが立ち上がった。

誰もが止める間もなく、彼女はポケットからナイフを取り出し、ゆっくりと、無言で一歩踏み出した。


――“人狼”とは、ゲームであるはずだった。だが今、この部屋では、“命”が懸かっている

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