赤沼村
深夜 幻夢
〜プロローグ〜【事件の開幕】
ここは、とある県の山奥にある小さな集落、赤沼村(あかぬまむら)である。
この集落で、ある殺人事件が起こった。
被害者は、集落に住む村人13人。
加害者は、同じ集落に住む、立花 雄介(たちばな ゆうすけ)、28歳。
静かで自然に囲まれた、この集落で事件が起こったのは、一ヶ月前。
雪が静かに冷たく降る12月下旬。
13人の村人を殺害した立花は、近くの山に逃げ込んでいたが一週間後に、警察の捜査により発見された。
発見された立花は、一週間、何も食わず飲まずで、かなり衰弱していた。
雪の降り積もる中、寒さで肺炎にもなっていた。
全身に血を浴び、服もボロボロに裂け、やつれて、げっそりと頬のこけた立花は、まるで死人のような青白い顔をしていた。
このまま、発見されるのがあと2、3日遅れていたら、間違いなく立花は、死んでいただろう。
警察は、立花の容態が落ち着き安定してから、事情聴取をする事にした。
精神的にも、かなりの興奮状態である立花には、少し長い時間がかかりそうである。
村人の話によれば、立花は、普段は、とても優しくて気さくで、とても働き者であったという。
年老いた者の多い村で、若い立花は、頼りにされており、村の集会や農作業も嫌な顔一つせず、協力的だった。
そんな立花が13人もの人を殺した。
村人達は、みんな信じられない気持ちだった。
この事件を担当する事になった、城ヶ崎 秋彦(じょうがさき あきひこ)と、田辺 優一(たなべ ゆういち)は、村人に話を聞き込みながら、事件を調査してしたが、村人全員が口を揃えて「立花は、いい人、優しい人」だと言い、それ以上、詳しくは、話そうとしない。
それが逆に、城ヶ崎に違和感を覚えさせた。
人間、どんなにいい奴でも、欠点の一つや二つはあるものである。
しかし、それが一つも出てこない。
『村人は、何かを隠している?』
そんな思いが城ヶ崎の心の奥に芽生えたのである。
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