放課後の勉強会

スコール

放課後の勉強会

 遠くで吹奏楽部の練習している音が聞こえる。

 それにつられてノートから顔を上げると、目の前のあいつも顔を上げて外を見ていた。

 放課後の夕日に照らされたあいつの横顔は、いつも以上にきれいに見えて少しドキッとした。

 見とれていると、あいつが視線をこっちに戻す。

 一瞬、俺とあいつの視線は絡み合う。それが恥ずかしくて、俺は焦って下を向いた。


「こっち見てただろ」


 あいつはからかうように、転がるようにクスクスと笑う。

 俺はそれがさらに恥ずかしくて、ますます下を向いた。


「耳まで真っ赤だぞ。何見てたんだよ」

「うっせ」


 そう言うだけで、何も言い返せない。いつも見慣れてるあいつの顔を『きれいだ』と思ったなんて、とてもじゃないけど言えなかった。

 俺は必死に目の前の課題に意識を集中しようとするが、全く集中できない。


「ねえ、ここ教えてよ」


 そう言ってあいつの手が俺の開いてたページを指す。


「いやお前、そこは前に俺が教えてもらった——」


 それに釣られて、俺はつい顔を上げてしまう。

 そこにあったのは、目を細めてこっちをみてるあいつの顔だった。


「やっと目があった」


 その笑顔にやはり、心臓が跳ねる。

 今度は、目をそらすこともできなかった。

 俺とあいつの視線が重なって、永遠のような一瞬が流れる。


「な、なんか言えよ」


 なんとも言えない沈黙に耐えられなかったのか、あいつが視線をそらしてそう言った。

 その仕草も妙に魅力的に見えて、つい本音が漏れ出た。


「さっき、お前のこときれいだなって思ってみてた」

「へ……」


 うっかり、思ってたことをそのまま言ってしまった。

 数秒して、俺も何を口走ってしまったのか理解する。


「あっ、いやっ、今のは……」


 慌てて否定しようとしてあいつの顔を見て、俺はまたしても言葉を失った。

 なぜなら、口元を押さえて顔をそむけているあいつの耳が真っ赤になっていたから。


「今のは反則でしょ……」

「え……?」

「あんたばっかりずるいよ」


 そういってあいつは、真っ赤な顔でからからと、転がるように笑った。

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