第七章『割れた鏡』


ある晩、悟は夢を見た。

自分の部屋に、誰かが勝手に入ってきて、自分の生活を一つ一つ吟味している夢。

日記、パソコンの履歴、冷蔵庫の中身すべてを覗かれ、指をさされ、笑われる。


目が覚めると、背中に冷たい汗が流れていた。

そしてなぜか、玄関のドアのチェーンが外れていた。


**「誰かが、俺を見てる」**


その確信はもはや妄想ではなく、現実味を帯びてきていた。


悟は思い切って、最上階の部屋の前に立った。

呼び鈴もノックもなかった。ただ、ドアには一言だけ書かれた紙が貼られていた。


**「本当の顔を見たくないのは、あなた自身じゃないですか?」**


震える手で悟はドアノブに触れたが、鍵はかかっていた。

ただ、ドアの奥からは、かすかに音が聞こえていた。

人がいる。

確かに、そこに“なぞの住人”は存在していた。

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