その夜、悟は偶然、悠愛の部屋のドアがわずかに開いているのを見つけた。

呼びかけようとした時、中から聞こえてきたのは、泣き声だった。

小さな、震えるような嗚咽。

彼女がそんな風に感情をむき出しにする姿を、悟は初めて見た。

それから数日、悠愛は何事もなかったかのように振る舞っていた。

「最近、掲示板の紙のこと、気にしてる人多いですよね」

「……悠愛さんは、気にしてないんですか？」

「うーん、慣れてるんで。人に嫌われたり、何か言われたりするの」

その笑顔には、諦めにも似た達観があった。

誰よりも人に囲まれて生きてきた彼女が、誰よりも孤独だった理由が、悟には少しだけ分かった気がした。

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