第6話 闘技

 そこからの話は早かった。


 衛兵は、その言葉を聞いて、嬉々として承諾した。彼としても棄権する意味がないため、迷わず頭を縦に振った。


 そして、一旦倉庫らきしき物の前に行き────もっとも、彼が見たことがないくらい大きかったが────そこで、僕の剣を取るようにと命令した。


 だが、そこでは受け取らず、別の方向に歩を進める。

 長い長い廊下を歩き、大きい門に直面する。


 その門に彼女が歩くのだが、到底女児の力では開けられないような門。

 どうしたものかと見ていると、彼女が手をかざすだけで開いた。


 その技術を見て、彼は動揺することもなく、ただ納得しただけだった。


 昔、安楽死させてくれ、と依頼が来たため、夜に堂々と門から侵入することがあった。


 どうやら城の人たちと話し合って決めたらしく、門番が彼の顔を見ただけで、一礼をし、何やらいたたまれない気持ちになったのを覚えている。


 その時に、この技術を使っていたため、特段不思議に思うことはなかった。


「あら、これに驚かないのね。なんだ。少しばかり面白い反応を期待していたのに」

「昔、見たから」

「あっそ」


 何やら素っ気なく返されたようだが、特に会話する必要は無いので、黙ってついていく。

 開いた門の先には、草が生い茂っている土地があり、少し遠くに円形状の石で作られた壁があることがわかる。


 このタイミングで剣が返される。やはり、剣を振るって居ないと落ち着け無かったため、少しだけ振り回す。


「ハハハッ!滑稽だな!」


 後ろから嘲笑が聞こえる。声の主を見て確認しなくても良かったのだが、一応振り返る。


「君にはそんなに無様に剣を振るうしか能がないのか!本当に滑稽だ!もう少し優美に振れないものかね!」


 そう言い、見せつけるように剣を動かしている。うん、隙だらけ。


「何?優美に振って何かが起こるのか?絶対そんなトロい剣技より、まだがむしゃらに振っていたことがマシだぞ?」


 少し頭にきて、トゲを隠さずに言葉を返してやったところ、相手も相当に頭にきたのか、顔を真っ赤にさせながら斬りかかってくる。


「ちょっ…まだだろっ!」

「殺す!コロスコロスコロス!お前だけは絶対にコロス!」

「あははっ!面白いこと!」


 クレアが愉快そうに笑いながら手を叩いている。

 特に止めに来ないからこのまま始めても良いのだろう。


 そう認識した彼は、剣を折ろうと、側面を滑らせ…


 眼の前に、回避不能の距離で槍が現れていた。


 衛兵の顔が狂気で歪む。


 最後の抵抗として、相手の剣を折ったのと、槍が右目に直撃したのは同時だった。

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名がない殺し屋は、愛を知る。 むぅ @mulu0809

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