第5話 ソフィアの叔母さまは魔法バカ


 「お邪魔します。」


 大きな扉がある。

 それを少し開けて中に入る。


 (こんなに大きいのにめちゃめちゃ軽い。)


 そして部屋は大きな机がドンと置いてあり、囲むように椅子が並べてある。


 中にはリジュ、レイジと後………誰?


 見たことのない少年が机に座っていた。


 「フィイ!」


 とたとたと座っていた椅子から飛び降りてリジュが来る。


 「どうだ?魔物の熱気がすごかっただろう。」


 牢からここまでの近道は正面の門の道を通るのが一番。

 そこの道を通って私の叔母が帰ってくるため出迎えの魔物がずらっと並んでいた。


 その背中側を通ってきたのだが全然気づかれなかった。


 「まだ本人が登場してないのにすごいわね。魔物も人間と同じ感情があるのね。」


 「まあそうだな。ロボットじゃあるまいし、基本的に人間と一緒だよ。」


 呆れた顔をするレイジ。


 「そうね。見た目だけが違う感じがするわね。…………今日、あなたたちのほかの兄弟も来るのでは?」


 「そう!家族、みんな、来る‼」


 家族がみんな来る?

 ね、本当に私居ていいやつかな?


 「家族会だ。母さんと姫も叔母と姪の関係だろ?全然入る入る。」


 「でも兄様。その子は人間です。勝手に牢から出していいと思っているのですか⁉魔王様に言いつけますよ⁉」


 大きな扉が少し開いて、顔を出す精霊のような小型の少女。


 「ピリピリすんなって。言ノ葉コトノハ。初めて会うとはいえ、お従姉ねえさんに対してそれはないだろ?」


 レイ爺の言い方から考えてリジュやレイ爺の妹と考えていいだろう。


 「まあいいだろ。入れ入れ。四人そろったな。あと幽詩ユウシだけか。」


 「四人………?この部屋に五人いるでしょ?」


 「五…………?ユウシ。いるなら鈴を鳴らせ。」


 少年はポケットから鈴を出し、


 リィ―――――――ン


 と音を鳴らした。


 「いたのか。というか、ソフィアには見えるのか⁉」


 「というか、今、何も見えない。」


 「は?」


 「うん。視界が真っ暗。」


 もっと騒いでいいことかもしれないが、今私の視界は真っ暗だ。


 「だ~れだ。」


 私の後ろから声が聞こえてくる。


 「ヴィレナ叔母様。」


 「残念。バレちゃった。」


 「ママ‼」


 声だけで、リジュの気分が上がったのが分かる。

 真っ暗な状態から元に戻り、後ろを振り返ると、誰もいなかったところから叔母が現れた。


 「久しぶりソフィアちゃん。」


 「母上?どこから入ってきたのですか?」


 レイジも気が付いていなかったようだ。


 「え?ソフィアちゃんと一緒に。ソフィアちゃんが魔物を理解してくれてよかった~。」


 「人間と魔物。とても面白いものですね。」


 「そうでしょ‼私もね、潜入しに人間界へ行ったんだけど、そりゃもうほぼそっくりで。ビックリしちゃった。」


 そうか。

 叔母さまは魔物だけど、人間の城へ。

 私は人間だけど、魔物の城へ。


 似ている。


 「でも、潜入するだけならなぜ王の弟の妻に?」


 「あ~………ね。一目惚れよ、一目惚れ。どうやら人間の子供を助けているときに見てたらしくてね。これから婚約者に会いに行くっていうのにそれ見て、婚約は白紙にして私に求婚。」


 行動力のある叔父様らしい………。


 「ヴァルも大概にしてほしいよね~。結婚してるのにそれも聞かずにその日に式上げて。知らず知らずにあんな立場になっちゃって。まあでも、人間のヴィレナと魔王の妹ヴィシェリアは別人ととらえたらその辺はもういいかってなっちゃったよね。」


 「カイエルとアルディアは?」


 カイエルとアルディアは私の従弟。


 「……まあそうよね。正真正銘ヴァルとの子供よ。ってそんな事より‼やっぱりユウシが人間には見えるのね⁉」


 「ユウシって……そこの?」


 「そう‼幽詞は延々召喚詩で姿の見えない、声だけに作ったはずが、魔物には見えないけど、私には見えちゃってね‼召喚者には見えちゃうのかな~って思ったけど、ソフィアちゃんには見えるのね。」


 叔母さまはユウシさんの肩を掴み前後に揺らしている。

 ユウシさんの頭はがくがくしている。

 するとピタッと止め顎に手を当て


 「あ、血族には見える?でもリュジュー達には見えないのよね。やっぱ人間だけ?まさか人間の血族?いやないか。でも、試験段階だし、あるかも?でも、一番は人間には見えるね。」


 もしかしてだけど……


 「叔母さま魔法バカ?」


 「かなりの、な。」


 レイジが追加する。

 城にいたころはそんなに感じなかったけど、抑えていたのかな?


 ………そう思えばいくつか上がるな。

 気が付いたら髪がチリチリになってたり、たまに城の一部が爆破した現場に叔母さまが居たり。

 多分これは失敗してしまったのだと思う。


 延々召喚を作り出したのも叔母さまだ。


 「母さま。今回返ってきた理由を知らされておりませぬ。」


 「あ。そうだね。ユウシの姿が見られるようになるかもしれない薬が作れたから帰ってきたけど…………やっぱ当たってなさそうね。止めとかないとユウシの体が心配だし。」


 「………母さま。それなら郵送すればよいでしょう。なぜ帰ってきたのですか。異母兄弟と共に向こうの世界で暮らしていてください。人と魔の成長は違います。人間の方が明らかに成長が遅いのに。」


 コトノハさんはトゲトゲした言い方になっているがカイエルやアルディアの事を心配しているのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る