第2話 可愛い可愛い可愛い∞………見張りちゃん

 「はあ……。」


 さらわれて一週間になる人間の姫、ソフィアは溜息をついた。

 七日が経ち、一つ目の野次馬はだいぶ減ってきた。

 ならなぜだろう。


 その理由は、見張りが付いたことだ。

 なぜならば、ソフィアが何度か一時的に牢を脱出したからだ。(自業自得)


 (見張りがついてしまった。これなら脱出しようがない……)


 脱出することは普通ことだと思っている姫であった。


 いや。でも、見張りは小さくてかわいい。

 私でも殺れるのでは……?


 そう。見張りはなんか小さくてかわいい子供っぽい獣人…よりかは獣っぽさは耳と尻尾だけなので半獣人なのだ。


◇◇◇◇◇◇


 〚姫〛は武器、〚食事について来たフォーク〛をもった▷

 

 そこの子供を

▷殺る


 殺らない


◇◇◇◇◇◇


 さあどうしようか。


 ソフィアは考えた。

 見た目通り子供なら……


 「おいで。」


 ソフィアは獣人に話しかけた。


 自分の膝をトントンとする。


 まさか話しかけられると思っていなかったのか一瞬ビクっとして恐る恐る姫を見る。


 私が見てきた中で、魔物はほとんど人間と同じなのだ。

 それなのに私たちは見た目や寿命なんかで決めつけて…………。

 私たちが今、取り組みをしている「差別をやめる」じゃないか。

 国民に差別をやめろというのに王族は魔物を差別し、対立することになってしまっている。


 とそういう話をしたいわけではなくて

 なら、ここの子供も……とみた。


 「ァ…………?」


 とはいうものの、言葉は通じているだろうか?


 「人間、僕、怖い、ない?」


 言語が違うのか、こういう話し方なのか。

 意味は伝わるが、それ以上に………………。


 「怖くないと言ったら嘘になるけど、君は……………。」


 「僕、は?」


 首を右にこてんとかしげる


 「可愛い。」


 「か、わ、い、い?」


 右にこてんとかしげる。

 かわいい。


 ふむ。

 もともと言語が違ったとお見受けしようか。


 「私と仲良くするのも君の仕事だ。」


 「な、か、よ、く?」


 こてんと右にかしげる。

 かわいい。


 おお。それも知らないか。

 なら、都合がいい。


 「仲良くするというのは、ナデナデたり、ギューしたりすること。」

                                ※違います

 「ナ、デ、ナ、デ? 牛?」


 左、右とかしげる。

 牛になってるところがかわいい。


 「それも知らないか。なら来て。教えてあげる。」


 すると、獣人の子供可愛い可愛い可愛いは背伸びを可愛い可愛い可愛いして鍵を開け可愛い可愛い可愛い、私の方に近寄ってきた。


 「まず、ナデナデと言うのはこういう事だ。」


 そう言って私は茶色で外はねの足の方まである長い髪をなでる。


 (………………随分と絡まっているな。今度、ブラシでもかけたいものだな。)


 「ナ、デ、ナ、デ、暖かい。」


 「⁉」


 動きから見るにもこの子は子供だと思う。

 魔王城も王国と似たような制度なら、子供はここで働かないであろう。


 なぜこの子はここにいる?

 この子の保護者はどこにいる?


 「言葉、おかしい?」


 「ううん。温かいって本当に良いと思う。」


 「ヘヘェ。」


 嬉しそうにする。

 かわいい。


 「つらいこと聞くかもしれないけど、ママやパパは?」


 「パパ、いる。ママ、いた。でも、とおい、で、てき、じょうほう?、あつめる、てる。」


 (………………………………)


 「パパはいる」というのは、魔王城で働いているという事だろうか?

 それは分かる

 「ママはいたけど、今は遠いところで敵の情報を集めている」という事か?

 魔物の中で、魔王城に敵を回すことはないだろう。

 と言う事はママは魔王城で働いていたが、その敵のところで潜入調査でもしてるのだろうか。


 魔王城の敵と言ってパッと思いつくのは私達、人間の事だ。


 早くお父様に知らせ………………違うな。


 私がここにいる間、考えるのは早く帰る事じゃない。

 魔王城や魔物の事を調べて、仲よくしよう。


 成功し、お家に帰れたなら、そこからはみんな人間の説得だ。


 この短期間で私は魔物も人間も似ているという事が分かった。

 そして魔物と人間も仲良くなれるという事が分かった。


 それが分かっただけで十分。

 あとはトップ同士が仲良くできるかどうか。


 幸いにも私は次代、人間国の五つあるうちの一つのトップになる。


 少しずつでいい。私はこの世界を魔物と人間が仲良くできるような王になりたい。


 「姫、牛、も!」


 そんなことをなでながら考えていると、獣人の子供に言われた。


 「牛、じゃなくて、ギュ――――っていう音?とにかくやってみよう。」


 私は獣人の子供を痛くない程度に抱きしめる。


 「いっぱい、あったかい!」


 「よかった~」


 そうだ。この間、ヴァンパイア兄弟(仮)に名前がある事が分かった。

 この子にもあるんだろうか。


 「ねえ。お名前は?」


 「り、じゅ!」


 「リジュ。よろしくね!」

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