第三話: ゴム弓で射抜く!

「この弓で──」


主税はゴム弓をぎゅい〜んと引きながら、美幸を見つめて言い放った。


「美幸さんの心を──射抜きたいです♪」キラ〰︎ン


「ゴム弓でどうやって射抜くんだよ……」


剛が呆れた|顔で、バッサリとツッコむ。

肩を落としてるようで、ちょっとだけ口元が緩んでる。


「あははははは♪」


美幸が、屈託なく笑う。

その笑い声が、空気を少しだけ和らげた。


剛は真顔に戻って、ぽつりと口を開いた。


「とにかく……まずはゴム弓まともに引けるようになれよ」


「さっきはイラついて、ひでぇ事を言っちまった。申し訳ない‼︎……だが間違ったことは言ってねぇつもりだ。ビシッとしてるし、ちゃんとやれば、お前、意外とモノになるかもしれねぇ。」


「一週間後、ちゃんと出来てたら……次は巻き藁の前で、本物の弓を引かせてやる。良いっすよねぇ⁉︎斉藤先輩!」

親指を立てて笑顔の斉藤主将。


そう言って、少し照れたように視線を逸らしながら、


「……まぁ、頑張れよ」


「剛先輩……意外に……いい人っぽい……⁉︎」

(後輩たちの心の声)


こうして、主税の弓道チャレンジ第一日目は、ドタバタしつつも無事終了した──。


──その日の部活後。


「はぁ〜、汗かいた〜。やっぱ制服のまま練習は無茶あったな〜」


汗をぬぐいながら、体育館の二階にある空手道場へと向かう主税。


「あ、行った行った!」

「あいつ空手やってんだよね?」

「全国2位ってホントだったのかな?」


弓道部の数人が、こっそり空手道場の小窓に張り付いて覗くと──


「拳をしっかり水月の位置に来るように!」

「緩急つけて、止める時にだけ力を入れて!はい、もう一回!」


真剣な声が響いていた。


指導するのは──八尋主税。


制服の時とは別人のようにキリッと引き締まった顔つき。

道着姿で、大人たちにも的確にアドバイスを送っていた。


「か、かっこよ……!」

「誰……?あれ……さっきと……同一人物⁉︎」


さらに、見本を見せるその動きはしなやかで、力強くて、美しい。


──そして、始まる組手稽古。


バチバチッ!バシィッ!ドゴッ!


フルコンタクトならではの激しい攻防!

突き!蹴り!受け!返し!


「すげぇ……」

「大人相手にやってんの⁉︎」

「え……なんか……超強くない……?」


あまりの迫力に見とれていると──


「ごめんくださーい♪」


と、道場の入り口に、ひとりの女性が現れた。


上品でキレイで──なんかこう、エレガントなオーラ。


「……!」


その瞬間、まるで“敵の気配”を感じたかのように、マッハで気配を察知した主税!


「京子さんっ!」


バッと振り向き、ズババババッと駆け寄る!


「こちらどうぞ!お席こちら!イス!イスどこっ⁉︎」

「肩こってません⁉︎ほら!肩もみますよっ!」

「お茶出します⁉︎砂糖は1つ派ですよね⁉︎」

「ねぇ、今日のスカートも最高です!」


超高速テンションに切り替わる主税。

まさかのテンションスイッチに、弓道部一同──


『やっぱバカなんだな〜……』


ちょっと尊敬しかけた自分を悔い始める部員たち。


が──ただひとり。


前田美幸だけは、お腹を抱えて涙を流しながら笑っていた。


「ぷっふふ……ははっ、あははは……!」


その笑い声に、道場にいた人々がふと振り返る。


「なんか……」

「八尋くんかぁ……良い子だな、あの子」


主税はまだ気づかない。


彼の“素直さ”が、美幸の心をジワジワと射抜き始めていることに──。

 


To Be Continued…

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