Ep24:モールの謎(深まる謎)


星見キッズは、タクミの家での泊まり会の翌日、近所の星見モールで起きた刺傷事件に巻き込まれた。被害者の山田美咲は命を取り留めたが、黒いフードの人物が吹き抜けで刺し、2階へ逃走する姿がカメラに映っていた。目撃者が多いにもかかわらず犯人の顔が見られていない謎と、現場に残された「次はお前が…」という脅迫文が事件を複雑にしていた。シュウはタクミへの感情が抑えきれず、チームワークが乱れ始めていた。




事件当日、モールでの初動調査を終えた星見キッズは、タクミの家のリビングで作戦会議を開いていた。シュウがノートを広げ、状況を整理した。


「黒いフードの人物が吹き抜けで山田美咲さんを刺し、2階へ逃走。凶器は見つからず、目撃者が多いのに顔が見られていない。脅迫文には『次はお前が…』とある。トリックが何か…。高木刑事でも解けない謎だ」




タクミがタブレットを手に提案した。


「シュウ、2階のカメラ映像、もっと詳しく見る? 何か見落としがあるかも」


「うん、タクミ、頼むよ…」シュウはタクミに微笑んだが、他のメンバーの表情は曇っていた。




カナエが静かに口を開いた。


「シュウ、さっきからタクミの意見ばかり聞いてるけど、私たちの声も聞いてほしい。チームで解決するんだよね?」


「そうだよ、シュウ。僕が見つけた柱の傷とか、リナのスケッチも重要な手がかりだと思うんだけど…」ケンタが少し苛立った声で言った。




リナがスケッチブックを手に呟いた。


「シュウ、タクミのこと大事なのは分かるけど、みんなで協力しないと…」


シュウは一瞬言葉に詰まり、ノートに目を落とした。


「ごめん…。みんなの言う通りだ。僕が…集中できてなくて」シュウの視線がタクミの無垢な横顔に向かい、心がまた揺らいだ。




タクミが「僕、大丈夫だよ。シュウ、みんなで頑張ろう?」と笑顔で言うと、シュウは「うん、タクミ…ありがとう」と呟いたが、内心の葛藤は深まるばかりだった。




タクミがタブレットで2階のカメラ映像をさらに解析すると、新たな発見があった。


「シュウ、2階のエスカレーター近くで、黒いフードの人物が何か落としたみたい! 小さな袋っぽいのが映ってる」


「さすがタクミ! すごいよ…。その袋、調べに行こう」シュウが目を輝かせたが、カナエがため息をついた。


「シュウ、私たちも手がかり見つけてるよ…。リナがスケッチした吹き抜けの状況、もっと詳しく見たらどう?」




「あ、うん…そうだね、カナエ。リナ、スケッチ見せてくれる?」シュウは慌てて答えたが、カナエの苛立ちは隠せなかった。








星見キッズは再びモールへ向かった。警察の許可を得て、2階のエスカレーター周辺を調べると、タクミが指摘した小さなビニール袋が柱の陰に落ちていた。シュウが慎重に拾い上げ、中を確認した。


「これ…ナイフの柄に付いてた布の切れ端だ! 血痕も付いてる。凶器の一部だ!」


「シュウ、すごい発見だね! でも、どうやってこの袋をここに隠したんだろう?」タクミが目を丸くした。


シュウはタクミの無邪気な表情に一瞬見とれ、


「タクミ、よく気づいたね…。本当に頼りになる」と呟いた。


ケンタが苛立った声で言った。


「シュウ、僕たちもいるよ! タクミばっかり褒めるの、やめてくれない?」




リナがスケッチブックを開き、吹き抜けの状況を再確認した。


「シュウ、吹き抜けの真ん中で刺されたのに、誰も顔を見てないのは変だよね。近くに鏡とか、視線を逸らすものがなかったか、スケッチ見直してみる」




「うん、リナ、頼む…。タクミ、疲れてない? 大丈夫?」


シュウがまたタクミを気遣うと、リナがスケッチブックを閉じて言った。


「シュウ、私たちの仕事も見てよ。タクミは平気だって言ってるじゃない…」


タクミが「うん、僕、大丈夫だよ…」と答えたが、チームの空気はぎこちなかった。






高木刑事が現場に現れ、星見キッズの新たな発見を確認した。


「布の切れ端と血痕か…。鑑定すれば犯人のDNAが出るかもしれない。だが、トリックがまだ分からない。目撃者がこれだけいて、顔が見られていないのは異常だ。視線を逸らすトリックか…?」高木刑事が首をかしげた。




シュウがノートに書き込みながら言った。


「リナのスケッチにヒントがあるかも。吹き抜けの構造と、犯人の動きをもう一度整理しよう」リナのスケッチを見ると、吹き抜けの真上に大きなシャンデリアが描かれていた。


「このシャンデリア、ガラス製だよね…。反射で視線を逸らした可能性は?」リナが提案した。




「確かに…。シャンデリアの反射で、犯人が一瞬姿を隠したのかも。タクミ、シャンデリアの位置、カメラで確認できる?」シュウがタクミに頼んだ。


「うん、やってみる!」タクミがタブレットで映像を解析し、シャンデリアの反射が犯人の姿を隠す瞬間を捉えた。


「シュウ、シャンデリアのガラスが光を反射して、犯人の顔が一瞬見えなくなってる!」


「タクミ、すごい…! これがトリックの鍵だ!」シュウがタクミの手を握り、興奮した。




しかし、カナエが冷たく言った。


「シュウ、タクミの手を握る前に、私たちの意見も聞いてよ。トリックは分かったけど、犯人の動機や逃走経路はまだだよね?」


「そうだよ、シュウ。シャンデリアだけじゃ解決しない。もっと全体を見なきゃ」ケンタが付け加えた。


シュウはハッとして手を離し、「ごめん…。そうだね、動機と逃走経路を追おう」と答えたが、タクミへの感情が抑えきれず、チームの不協和音は深まっていた。




警察が布の切れ端を鑑定に出し、DNAが山田美咲の知人である佐藤健太郎という男と一致した。高木刑事が説明した。


「佐藤健太郎、38歳。山田美咲の元同僚で、最近職場でのトラブルがあったらしい。動機は怨恨の可能性が高い。だが、彼のアリバイが固い。事件当時、モールの反対側で買い物をしていたと、複数の証人が証言してる」


シュウが首をかしげた。


「アリバイがある…? でも、DNAが一致してるなら、犯人に間違いない。トリックがもう一つあるはずだ」








星見キッズはモールの反対側を調べに行った。そこは雑貨店が並ぶエリアで、事件当時の混雑ぶりを店員に聞くと、「確かに混んでたけど、佐藤って男、覚えてるよ。ずっと店内にいた」と証言があった。


シュウがノートに書き込みながら呟いた。


「佐藤健太郎が犯人なら、吹き抜けで刺した後、どうやって反対側に移動したんだ…? 時間的に無理だ。タクミ、カメラ映像で佐藤健太郎の動きを追える?」


「うん、やってみるよ、シュウ!」タクミがタブレットで映像を確認したが、カナエが静かに言った。


「シュウ、私たちも手がかり探すよ。タクミだけじゃなくて、みんなで協力しないと…」


シュウは「うん…ごめん、カナエ」と答えたが、タクミへの視線が離れなかった。




タクミが映像を確認し、「シュウ、佐藤健太郎、事件の5分前に雑貨店にいるのが映ってる! でも、事件直後の映像がない…。どこかで消えたみたい」と報告した。


ケンタが店内のゴミ箱を調べ、「これ、黒いフードの服が捨てられてる! 犯人が脱いで隠したんだ!」と叫んだ。


リナがスケッチブックに店内の配置を書き、「このエリア、裏口があるよ。犯人がここから逃げた可能性は?」と提案した。


シュウが「タクミ、裏口のカメラはある?」と尋ねると、タクミが「うん、あるよ! 確認する!」と答えたが、ケンタが苛立った声で言った。


「シュウ、僕たちが見つけたフードや裏口のこともちゃんと見てよ…。タクミばっかり頼るの、やめてくれ」裏口のカメラ映像を確認すると、佐藤健太郎がフードを脱いで裏口から出ていく姿が映っていた。


「これだ…! 佐藤健太郎が犯人だ。フードを脱いでアリバイを作ったんだ。でも、時間的にどうやって…?」シュウが考え込んだ。




高木刑事が近づき、「時間の問題だな。吹き抜けからこのエリアまで、5分で移動するのは不可能だ。トリックがもう一つあるはずだ」と呟いた。


シュウは「トリック…。時間をごまかす方法か…?」と考えを巡らせたが、タクミの疲れた顔を見て、「タクミ、休憩しよう。無理しないで…」と声をかけた。


カナエが冷たく言った。


「シュウ、事件解決が先だよ。休憩は後でいいよね?」




星見キッズのチームワークはさらに乱れ、事件の謎は深まるばかりだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る