第3話 海王丸

「お前かここらを荒らしているのは!」

 

 開幕騒々しいクソガキが現れた。年のころは十の半分も行かないだろう。

 だが豪華な装束に青の肌。伸びる巨大な一本角はその力を彷彿とさせる。


「困るんだよな。お前みたいなわかってない鬼。人間を絶滅させてどーすんのって感じ。生かさず殺さず飼いならさなきゃいけないんだ。ソコ、わかってる?」

 

 何を言っているのだこいつは。


「若。無頼の鬼など構っている場合ですか」


 もう一人の鬼が現れた。いや、これは人間だ。角はただの飾りだ。こちらの身なりも身分の高さを物語っている。


「是正丸。俺の事は海王丸でいいって言ってるだろ」


「若。どこに目があるのかわからない以上若は若です」


 こいつらはなんだ。俺は自分のみすぼらしい姿に腹が立つ。

 なぜこんなガキが良い服を着て慕われている。

 鬼に堕ちてまで格差を与えようというか。


 俺は金棒を振り上げようとするが動かない。


「やはり無頼の鬼など話が通じるわけがないのです」


 何かの術か。人間め。何故それをそこにいる鬼に向けない。


「やっぱり駄目かぁ。こいつは良い子分になりそうだったのにな」


 ガキが。


「ここは格の違いを見せないとな。鬼の血族のオレが無頼の鬼とは違うってとこを見せてやるぜ!」


 ガキが角を使うとあらゆるところから水が集まり渦になる。

 その渦が俺を飲み込むと体中が割かれその血が霧散していく。

 この力の差はなんだ。これが生まれの差だというのか。

 なら俺は何のために鬼に堕ちたのだ。


「どうだ。子分になるなら許してやるぞ」


 このガキめ。


「・・・ぜ」


「なんだって?」


「滅ぼせ」


「あーはいはい。そういうのめんどくさいんでサヨナラ! オレの子分には要らねぇや」


 ガキの刀が俺の核を貫く。

 これでいい。

 ガキ俺の金棒を持っていけ。


「じゃこいつはもらっていこうかな」


「若。またそんなゴミを」


「良いんだって。オレが気に入ったんだからさ」

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