この車、俺より責任感ある
「で、どうやったらこんな風に爆発させられるんだ?」
軍務憲兵の士官はプラットフォームの端に立ち、黒い執行用グローブのまま報告書をめくっていた。
目の前には、隕石に殴られたようなC-524-53-A号車。主砲は真っ黒に焼け、装甲の両側は凹み、識別番号は半分溶けていた。
「爆発させたんじゃない。あいつが、自主的に爆発を選んだんだよ。」
中士はキャタピラの脇に座り、足元の電池箱を踏みつけながら言った。
「報告にはこう書いてある。『高火力区域からの撤退命令を無視し、進入禁止エリアに誤進入』。」
憲兵は報告画面を指で叩いた。まるで神経を刺激するように。
「その区域、連邦の主力が通信衛星を破壊してきて、命令なんて届いてねえ。」
「じゃあなぜ進んだ?」
「地形の読み違い。あと、副班長が『あっちは廃墟っぽい』って言ったから、俺は信じた。」
憲兵の眉が動いた。「で、実際は?」
「反歩兵自走砲が2台。正面火線。」
「それ、判断じゃなくて信仰だな。」
「いや、彼女の“間違った判断の一貫性”には信頼してる。」
「……言葉の選び方、上等だな。」
「本音だよ。」
彼は焦げた主砲を見上げた。
「こいつ、被弾して最初にやったのはナビゲーションを切ることだったんだ。まるで自分のミスを自覚して、これ以上俺たちを地獄に連れて行かないようにしたみたいにな。」
憲兵は無表情で見返した。「それに忠誠勲章でも授与したいのか?」
「帝国戦車精神シンボルとして登録申請中。」
その時、足音が響いた。
副班長が現れた。全装備は着ておらず、基本戦闘服だけ。顔に微かに煤がついている。
彼女は車を一瞥し、彼を一瞥した。
「また遺言代わりのスピーチでもしてた?」
「今、あいつの方が俺より世渡り上手って話をしてた。」
「少なくとも、喋らないだけマシね。」
軍務憲兵は小さくため息をつき、報告画面にコードを打ち込んだ。
「戦列に戻る前に、二人とも心理評価室へ行ってこい。」
副班長は淡々とした目で彼を見つめる。火気はないが、重い。
「喋っていいのは、ちゃんと訓練済みだからよ。」
中士が口を挟んだ。「不合格なら、もうこの回収エリアで装甲板になってるだろうさ。」
憲兵は数歩歩いてから振り返った。
「……次は、戻ってこなくていいぞ。お前らの“ストーリー展開”、憲兵の処理が追いつかん。」
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