第41話 戦いの前触れ、小さな冷戦

洋館の食堂に、オレとヨウコ、菖蒲は集められた。赤茶色の備前焼のカップには、酸味の効いたコーヒーが入れられている。テーブルの中央には八本足の黒い蝶が描かれた皿にクッキーやマドレーヌが置かれていた。オレ達のいる反対側の椅子にひすいさんは腰かけていた。菖蒲は、オレとひすいさんを交互に見ていた。芹澤ひすいの【玩具修理バレエ=メカニック】、の箇所は研磨しているはずだ。となるとオレがもとに戻った後にあった一連の出来事は覚えているのだろう。

「大丈夫?」

「え、うん。勿論だよ。ケガ、治ってよかったね。あとここのお屋敷、凄いよね。天井高いし、柱もギリシャ神殿みたいだし、外の見た目も【魔女の住む家】って感じの洋館で綺麗だよね。アニメみだい」

菖蒲は目が泳いでいた。椅子とテーブルのサイズが合わないのか、身を乗り出して、マドレーヌに手を伸ばす、ヨウコが口を開いた。

「そうそう。よく残ってたよね、コレ。タイル張りのベランダとか300年は経っているでしょ。それに、見せつけ変態魔女の手元のグラス。パリ万博で有名になったガラスメーカーのモノじゃん。壁紙も豪奢だもんねえ。胸元のメドューサのメノウカメオも自分だって主張しているみたいで、キモイね。まあ、ユーイチ君も災難だねえ」

「カメオと呼ばずメノウカメオと言うか。なかなか話が分かるじゃないか、幼女趣味。ユーイチが世話になったようだから苦痛は刻まないよ」

ひすいさんがあんなことするから、今の張り詰めた空気がある。

オレは無関心を装い、マドレーヌに手を付けた。

「まあ、ここで何を話しても埒が明かない。大変不本意だが、君達を集めたのは、この死体についてと、菖蒲を狙うやつらの正体が読めた。ユーイチに手を出されて全く納得は言っていないが、このメドューサのカメオを貰っていて、それに関する以上、私は持てる全てをもって解決にあたろう」

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