21. 初仕事に向けて
イアン様と共に玉座の間に入ると、大勢の貴族達が重々しい口調で何かを話し合っているところが目に入る。
玉座の間にこの人数が居るところを見るのは初めてで、雰囲気から良くない状況だということは分かった。
話の内容に耳を傾けると、魔物のことについて語られていた。
どうやら魔物が大量発生する兆しが出ているようで、王都を防衛するための計画を立てているところらしい。
「イアン殿下、アイリス様。お二人はこちらへお願いします」
私達は陛下の隣に行くようにと促され、空けられている椅子に腰を下ろす。
すると、今の話し合いの内容について説明が始まった。
「イアンとアイリス嬢が来たので、繰り返しになるが現状を伝える。
王都の北方にある森で瘴気の発生が確認された。瘴気自体は数年に一度発生しているものだが、今回のものは今までに見たことのない濃さだ。
宮廷魔導師の予想では、手練れの魔法使いを一万人動員したとて、防ぎきれる可能性は低いという。今回の魔物がどのような傾向になるかにもよるが、普段よりも強くなった場合はかなりの犠牲が考えられるだろう」
瘴気の原因は分かっていない。
けれど、瘴気がある場所では魔物が大量発生したり、普段の何倍も強くなることが知られている。最悪の場合は、とてつもない強さの魔物が大量発生し、過去には大国が滅んだ記録がある。
かつての大聖女様の時は、この最悪の場合だったらしく、大国が一夜にして滅亡したと言われている。
明確な記録は残っておらず、当時の国王陛下が予想で書き記した資料を元にしているから、本当だったのかは分からないけれど……。
「黒龍の再来となれば、我が王国の総力を挙げても防ぐことは難しい。
頼れるのは、アイリス嬢だけだ」
陛下がそう口にすると、場の空気がさらに重くなった。
頼れるのが私だけ。
こんな絶望的な状況、私だって不安になってしまう。
治癒魔法はあるけれど、あれは怪我を治せるだけ。命を落としてしまえば、二度と戻せなのだ。
それに、私が魔法の勉強を始めたばかりという噂は社交界に広まっていて、周囲の貴族からの評価が『役立たずの聖女候補』だから、不安にならない方がおかしい。
「……ですが、アイリス嬢は今まで虐げられていたことで魔法を満足に扱えないと聞きました。彼女を頼らずに済む方法を考えるべきです」
「その通りだ。故に、そなた達の知恵を借りたい」
今の発言をしたお方の名前は分からないけれど、彼に何か考えがあるわけでは無い様子。
陛下に視線を向けられると、彼の今までの威勢が嘘のように消えていった。
他の方も良い案は浮かばないらしく、私に視線が集まってくる。
しばらく沈黙が続くと、陛下が再び口を開いた。
「このままだと、アイリス嬢の身に何かあれば、王国が滅ぶ可能性もあるだろう。
王家が倒れるのではない。王国民全員があの世行きだ。くれぐれも、おかしな気は起こさぬよう。
今日はこれにて解散とする。何か案があれば、すぐに報告するように」
これ以上の話し合いは無駄だと判断されたようで、この会はお開きになる。
すると、陛下が私に向き直り、こんな問いかけをされた。
「アイリス嬢。無責任なことではあるが、王国のために力を貸してもらえないだろうか?」
「私に出来ることでしたら、尽力いたしますわ」
断る理由なんて無いから、即答する。
すると、陛下は険しい表情を和らげた。
「感謝する。まずは今存在している強い魔物も倒せるところを目指してほしい。
イアンはアイリス嬢に怪我をさせないように付き添いなさい」
「分かりました」
具体的な指示が欲しいところだけれど、要するに私一人で王国を護れるようになって欲しいということなのだろう。
瘴気の影響がどれくらい酷いかは知らないけれど、せっかく幸せを掴めそうなのだから、たとえ黒龍が相手でも戦えるようになりたい。
そう思っていると、イアン様に手を差し出される。
「アイリス、まずは色々な魔法を自由自在に使えることを目指そう」
「分かりました」
こうして、私達は玉座の間を後にし、いつも通り魔法の勉強をすることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます