1,変な宇宙人(1)
天野雄介は、大阪の公立高校に通う普通の高校2年生だ。雄介は、いつも授業中に好きな星のことばかり考えている。雄介の席は窓際の後ろから2番目で、今も数学の授業中に先生の目を盗んでノートに星の絵を書いていた。
「おい、天野。何を書いているんだ」
「あ!」
雄介はついつい星の絵に夢中になっていて、先生が後ろから近づいて来たのが分からなかった。
「天野、それは数学の授業と関係ないようだな。授業が終わるまで後ろで立ってろー」先生の言葉に教室の皆が笑った。
授業が終わり雄介が自分の席に戻ると、クラスのいじめっ子3人が雄介の所に寄って来た。
「天野、さっきは何を書いていたんだ。また訳の分からない星でも書いていたんだろ」
いじめっ子の一人が雄介の手からノートを奪い取って、からかった。
「やめてくれよ」雄介は小さな声でもごもごと喋り、いじめっ子にははっきり聞こえない。
「何言ってんのかわかんねーよ」いじめっ子が雄介のノートを教室の2階の窓から外に放り投げた。窓の外を見るとノートはくるくると回って地面に落ちた。雄介は慌てて鞄を持ってノートを拾いに行き、そしてその日の授業も終わっていたのでそのまま家に帰ることにした。
雄介の家は学校から2キロ程の所にあり、歩いて通学している。家は二階建ての一軒家で両親と妹の4人暮らしだ。
雄介は、家に帰りキッチンに行くと母親が夕食の用意をしていた。
「あら雄介、今日は早かったわね。クラブ活動は無かったの」
「うん、ない」雄介は、母親にそっけなく返事をして、二階の自分の部屋に上がった。鞄を机に〝ドスン”と置くと、先に帰っていた妹が隣の部屋から叫んだ。
「お兄ちゃん、うるさい。勉強の邪魔」
妹の陽子は雄介の二つ歳下で中学3年生だ。雄介とは違い成績は優秀で両親からも認められている。雄介は、ハキハキとものを言い活発な妹になんだか劣等感を持っていた。
雄介は机の前に座りパソコンを開け、大好きな星空の映像を見だした。パソコンの画面には次々と銀河や惑星、星雲などの映像が写しだされた。
「宇宙はなんて素晴らしんだ。星の映像を見ていると癒されるな」雄介はパソコンの映像を見ながら思いを宇宙に巡らせていた。
「こんな宇宙に行ってみたいな。将来宇宙を旅して色々な星を見て回ることができるようになるのかな。僕が生きている間にそんなことができるようになればいいな」
大阪の夜空には、沢山の星を見ることはできなかったが、雄介が小さい頃父親の実家の田舎に行ったとき、夜空一面に広がる壮大な天の川と、今にも降ってきそうなキラキラと光輝く星々を初めて見た雄介は、それ以来宇宙のとりこになってしまっていた。
そんな雄介が次の日曜日の朝早く、まだ寝ていると何かの気配を感じた。ふと目を開けるとベッドの横に見知らぬ青年が立っていて、雄介の顔を上から覗き込んでいた。
「ギャ~、だ、誰なの君は」雄介は思わず大声で叫んでベッドから飛び起き、壁の方に後ずさりした。
「ごめん、びっくりさせたね。僕はアンドロメダ星から来たアロンと言います。よろしく」アロンと名乗る青年は満面の笑みで、握手をしようと手を雄介の前に差し出した。しかし雄介は、突然現れた見知らぬ青年に驚き、目を丸くしたまま壁に張り付いて固まっている。
雄介がアロンをよく見ると、金髪の白人の青年で、歳も雄介と同じ位に見えた。しかし服装は変だった。やたら体に密着している水色の薄いウエットスーツを一枚着ている感じで。左の腕にはスイッチがいくつか付いている筒をはめている。雄介は勇気を出して聞いてみた。
「君は、さっきアンドロメダ星から来たって言った?」
「そうだよ。アンドロメダ星はアンドロメダ星雲の中にある星なんだ」
雄介は、アロンの言っていることが理解できなかった。雄介は恐る恐る聞いた。
「なら君は、もしかして宇宙人なの?」
「そうだよ。アンドロメダ星人だよ」
「ギャ~、誰か助けて~」雄介は思わずまた大きな声で叫んだ。
「そんなに大きな声を出さないでくれよ。びっくりするだろ。誰か来たらどうするんだよ」
すると隣の部屋の妹の声が聞こえた。
「お兄ちゃん、うるさーい」
アロンは慌てて「お願いだから騒がないでくれよ。よしこの部屋をシールドしておこう」と言って左の腕に付いているスイッチを押しながら話した。
「シップ、僕が居るこの部屋をシールドしてくれ」
「了解しました」アロンの左腕のスイッチの付いた筒から声が聞こえた。
「この部屋に何かしたのかい」
「君が騒ぐからこの部屋の声が外に漏れないようにシールドしたんだ。これで大きな声で話しても大丈夫だ」
雄介は急に現れたアロンに驚いたが、アロンが悪いことをしそうでも無かったし、普段からこの広い宇宙には、宇宙人が居ても不思議ではないと思っていた雄介は、アロンの話を聞くことにした。そして雄介がふと自分の耳を触ってみると何か耳に付いていた。
「それは翻訳機だよ。さっき君が寝ている時に僕が耳に付けたんだ。それを耳に付けていれば僕の言葉が分かるだろ。僕も同じ物を耳に付けているから、君は自分の言葉で喋ればいいよ」
雄介は、耳に付いていた翻訳機を手に取って見た。それはイヤホンの様な形をしていて、ちょうど耳の穴に収まるようになっていた。
「宇宙人の君が僕に何の用なの。僕を何処かに連れて行くの?」
「そんなことしないよ。僕は、宇宙旅行ツアーに参加していて、色々な星を旅して回っている途中なんだ。それで地球にも寄ったんだよ」
「でも何で僕の所に来たんだよ」
アロンは雄介の顔を見てニヤリと笑った。
「君は選ばれたんだよ」
「選ばれた。何に選ばれたんだよ」
「宇宙に選ばれたの」
「何それ、訳が分からないよ」
「まあ、いいじゃないか。そんなに気にするなよ。ゆっくり説明するからさ」
雄介はアロンの言葉に不思議に思ったが、宇宙のことも色々聞いてみたくなって、アロンが地球に居るあいだ部屋を使わすことにしたのだ。雄介は、親しい友達が少なかったせいか、とても人懐っこいアロンのことが気に入った。 そしてアロンとの奇妙な生活が始まったのだった。
1週間が経った次の日曜日の朝、まだ寝ていた雄介をアロンが起こした。
「雄介、なにのんきに寝てるんだ。早く起きろ~」アロンが雄介の布団をはぎ取った。
「何だよアロン。ア~。今何時なの?」
「もう六時だよ」
「今日は日曜日だから九時まで寝るって言っておいたのに、なんで起こすの」雄介は、はぎ取られた布団を引き寄せて、また布団にもぐり込んだ。
「雄介、昨日も言ったけど君にはもう時間が無いんだ。地球人の平均寿命から考えると君はあと60年程しか生きられないんだぞ」
「60年もあれば十分だよ」布団の中からそう答える雄介の布団を再びアロンは、はぎ取った。
「雄介、なにのんきなこと言ってんの。宇宙時間にしたら60年なんか、ほんの一瞬だぞ。生きている間に色んなことをして、知識を増やしたり夢を叶えたりしないでどうするんだよ。君はいったい銀河系人として何のために生まれてきたんだ」
「僕はただの日本人で普通の高校生だよ、銀河系人じゃないよ。頼むからもう少し寝かせてくれ~」雄介がまた布団にもぐり込んだ。そんな雄介の様子を見てアロンは、腕を組んであきれている。
「そんな規模の小さいこと言っているから地球は、ギャラクシーユニオンから外されているんだよ。まったく残念な話だよ」
素っ気ないアロンの言葉に、雄介は布団の中から顔だけ出して聞き直した。
「ギャラクシーユニオン? 何それ」
アロンは、不思議そうな顔をしている雄介にギャラクシーユニオンについて説明を始めた。
「宇宙の中には沢山の銀河が存在していて、その銀河の中には文明の進んだ多くの星があるんだ。それらが連合に加盟していて、それぞれの星が互いに協力したり、助け合ったりしている組織をギャラクシーユニオンと言うんだ」
「銀河に連合があるの。何だか凄いな。でもなんで地球はそのギャラクシーユニオンから外されているんだよ」
「地球の現状を見てみろよ。未だに地球は地球人同士で殺し合いや、争いごとが絶えない。こんな低俗なことでは連合に一つの人類として認められないんだよ」
「そうだな、地球全体で見るとどこかで紛争は有るし、毎日犯罪は多いし、外から見たらまだまだ原始的な人種なんだろうね」雄介は、起き上がってベッドに正座し真剣な顔でアロンに尋ねた。
「アロン、地球が一つの人類として認められるにはどうしたらいいんだい」
「ギャラクシーユニオンの一員として認められるには、地球人全員が一つにまとまって、互いに助け合い、協力しあって、平和で愛に満ち溢れた星にならないとだめなんだ」
「今の地球の状態じゃあ平和の星とは到底言えないね」
「そうだ!雄介」アロンが大きな声でそう言って、雄介の右手を両手で握った。
「雄介、君がこの地球を代表して地球人をまとめていく役をやれよ。そして地球人が一つにまとまったら、君がギャラクシーユニオンに地球も加入するように交渉しろよ」
アロンの言葉に雄介は驚いた。
「何バカなこと言ってんの。僕にそんなことができる訳がないだろ」雄介は、アロンの手を振り払った。
「大丈夫、僕が手助けするよ。地球はギャラクシーユニオンに加入できないと将来滅びてしまうかも知れない。こんなに綺麗な星が滅びてしまうのはもったいないよ」
「そうなの。地球はこのままだと滅びるの」雄介の顔が真顔になった。
「よく考えてみろよ。今のままの地球だと必ず滅びるよ。だって地球温暖化による異常気象にも対処できていないし、地震の予知もできていない。もし巨大隕石が落下しそうになっても、なすすべがないよね」
雄介はアロンの言葉に納得した。今の地球の技術力では本当に滅びるかもしれない。
「アロン、地球がもしギャラクシーユニオンに加入できれば、地震や隕石落下から助けてもらえるのかい」
「今の宇宙技術を使えば地震の予知や隕石の破壊も簡単だよ。それにギャラクシーユニオンは、加入しているそれぞれの星を助け合うのが目的でもあるから、ギャラクシーユニオンに加入している星は必ず連合が助けてくれるのさ」
「アロン、地球がそのギャラクシーユニオンに加入できる可能性は有るの」
「可能性は有るんだ。ただ問題なのは、誰が地球をギャラクシーユニオンに加入させるかなんだ」
「それはどういう意味なの」
「地球をギャラクシーユニオンに加入させられる人物は、誰でもいいと言う訳ではないんだ。まず地球人であること。そして加入させられるだけの魂を持った人物が、加入する為のプレゼンをやらないとダメなんだ」
「魂をね。そうなんだ。でもどうやってその魂を持った人物を探すんだい」
アロンは雄介の顔を見てニヤリと笑った。
「実を言うと、もうその魂を持った人物は探してあるんだよ」
「へー、それは凄いじゃないか。だったら直ぐにその人物に説明して地球をギャラクシーユニオンに加入させるように話しをしたらいいじゃないか」
「そうだよ、だから僕はここに来たんだよ」
「え、ここに?」
「だから、雄介は地球をギャラクシーユニオンに加入させる可能性を秘めた魂を持っているんだよ」
「何で僕がそんな魂を持っているんだよ。誰がそんなこと決めたんだよ。訳が分からないよ」
「まあ、そんなに驚くなよ。ゆっくり説明していくからさ。ところで雄介、なぜ地球人は一つの星の中で紛争が有ったり、犯罪も絶えなかったりするんだと思う。地球がギャラクシーユニオンから外されている最大の理由は、そこなんだ」
「そうだな、世界のことはよく分からないけど、僕の行っている学校でもいじめや喧嘩があったりして争いが絶えないよ」
「雄介、紛争は国と国とが行ったり、国の中であったりして規模が大きいけど、身近でも小さないざこざは絶えない。そんな身近なことがだんだん大きくなっていくんだ。まず身近な皆が仲良くする必要があると思わないか。雄介の一番身近な人は誰だい」
「家族かな」
「そうだよ。人は一人では生きていけない。社会の中で誰かに助けられて生きているんだ。その中でも家族が最小の単位だよ。宇宙のどの星でも一緒さ。雄介の家族は皆仲良しかい」
「まあまあ仲がいいかな」
「世界中のそれぞれの家族みんなが仲良しで、他の家族ともみんな仲良しならどうだい。喧嘩をする相手なんか居ないよね」
「そうだね。誰も喧嘩しなくなったら地球は平和だね」
「雄介、最終的に取り組まないといけないのは、地球全体の平和なんだ。そのためにまず家族の愛だ。家族が仲良くして、自分の家族と同じように他人とも仲良くしていくんだ。それが世界に広まればいいんだよ。世界中が仲良しで平和なら直ぐ、地球もギャラクシーユニオンに加入できるよ。まず雄介が自分の家族で実行していかないと、世界が平和にはならないよ」
雄介は、アロンの話はもっともに聞こえたが、でもそんな簡単にはいかないだろうと思った。
「次に、家族仲良く、他人とも仲良くを広めるために何をするかだ。雄介はいま高校生だね。学校は楽しいかい」
「そうでもない。勉強は苦手だし友達も少ない。それに時々いじめられるから楽しくないよ」
「いじめられるのは大変だな。あのね雄介、この宇宙全体に宇宙の法則があるんだ。その法則通りにこの宇宙の全ては動いているんだ。君の身の回りで起こる全ても、この宇宙の法則通りになっているんだ」
雄介は、宇宙の法則と聞いて首を傾げた。
「君が住んでいる銀河系も、僕が生まれたアンドロメダ銀河でも、同じ宇宙法則の基動いているんだ。その宇宙法則の第一条は『心が全ての根源である』だ」
雄介は、アロンの言った言葉の意味が分からず、再び首を傾げた。
「雄介よく聞くんだ。この宇宙の全ては目に見える現実の世界と、目に見えない心の世界とで出来ている。目に見える現実の世界は、目に見えない心の世界が基になって存在しているんだ。そして現実の世界と心の世界は表裏一体となっていて、この宇宙全体に存在しているんだ」
雄介は、アロンが話した内容がまったく理解できなかった。
「簡単に言うと、その人の心が基になっていて、心の中でどのような感情を使って生きているかで、その人が現実手にする物や運命は変わってくるということだよ」
「アロン、だったらその人が持っている運命とかは無いの」
「運命は有る。人はこの世に生まれた時に運命を背負って生まれてくるんだ。どんな学校に行って、どんな人に出会い、どんな仕事をして、どんな人生を送って何時死んでいくのか決まっている。しかしその運命は、生まれたとき持ち合わせた心の使い方のまま生きていった運命なんだ。泣きたいときに泣き、怒りたいときに怒り、笑いたいときに笑う生き方をしたときの運命だ」
「だったら自分の思い通りに感情を使っているとダメなの」
「ダメと言う訳ではない、ただ運命のままの人生だということだ。運命を自由にコントロールして幸せに成りたいのなら、幸せになれる心を使えば幸せにも成れるし、健康に成りたいのなら、健康になれる心を使えば健康にもなれる。成功したければ、成功者の心を使えば成功者にも成れるということだよ。つまり心の使い方が全ての根源なんだよ」
雄介はアロンの話が分かったような、分からないような感じだった。
「雄介、だから学校でいじめられるには、それなりに君の心の中に原因があるということだ。この宇宙の中には原因のない結果など存在しない。いじめられる原因が有るから結果としていじめられるんだよ。その原因を作る根源が自分の心の中に有るということなんだよ」
雄介は、自分がいじめられる原因は、自分の心が原因だと言われても納得がいかなかった。
「雄介、よく考えるんだ。君は、君の一番身近な人をいじめていないかい。原因は自分の身近に有ることが多いんだ。君は家族全員から愛されるかい。家族全員を心から愛しているかい。家族に心を開き、なんでも話せるかい」
雄介は、自分と家族のことを考えてみた。アロンに言われて考えてみると、時々妹と喧嘩したり、お父さんやお母さんの言うことが聞けなくて叱られたりすることがある。そんなことがあると家族に対して嫌な気持ちを使う自分に気が付いた。
「いじめられる原因はそこだよ。雄介の心が、知らず知らずのうちに家族をいじめてしまう心になっているんだ。家族の心が一つにまとまり、家族の愛がしっかりしていれば、決して他人からいじめられることはないよ」
「そうなんだ。僕がいじめられるのは僕の心が原因なんだ」雄介はなんだか複雑な心境だった。
「雄介、考えてみろよ。他人が原因ではなくて良かっただろう。他人が原因なら、他人が変わってくれないと問題は解決しないけど、自分が原因なら、自分で自分を変えていけば、問題は解決するんだから良かっただろ」
「そう言われてみればそうだけどね」雄介はなんとなく納得した。
「それに宇宙法則の第二条は『同質が集結する』と有るんだ」
雄介は『類は友を呼ぶ』と言うことわざを思い出した。
「雄介がいじめられるのは、いじめっ子と同じ性質だからいじめっ子が君のそばに寄って来るんだよ。いじめっ子と異質になれば君のそばに寄って来ないよ」
雄介はアロンの言葉に自分が妹をいじめたり、両親の言うことが聞けなかったりするのが、いじめっ子と同じ質っていうことなのかと思った。
「アロン、どうすればいじめっ子と異質になれるんだよ」
「いじめっ子と異質になるには、家族とは仲良くして勉強を頑張るといいね。勉強を一生懸命に頑張れば、両親からも先生からも認められる。いじめっ子とは異質になれると思うよ」
「アロン、僕は勉強がとても嫌いだし苦手なんだ。勉強を好きになんかなれないよ」
「雄介、勉強が好きになる方法はある。でも雄介はまず悲観的な考え方をやめて、積極的になることだね。何でも苦手意識を持つより積極的に取り組んでみるといいよ。やる前から消極的なら何事も上手くいかないからね。やってみると案外上手くできたり、もし上手くできなくても何回か挑戦することで、必ず上手くいったりすんだ。初めからプロなんて、この宇宙のどこを探してもいないよ」
雄介は、アロンの言葉にもっともだと思ったが、自分の性格はそんなに簡単に変えられないと、また悲観的な考えがでてきた。
「ところでアロン、勉強が好きになる方法って何だい」
「勉強が好きになる方法は、先生を好きになって先生に色々質問したり、相談したりして、先生から気に入られる努力をすることだね」
「先生を好きになる。そんなことありえないよ。あの先生を好きになることなんて無理だ。あの先生を好きになるぐらいなら死んだ方がましだよ」
「なに馬鹿なこと言ってんだよ。先生も頑張っている生徒のことは可愛がってくれる。そうすれば、次に出るテストのヒントも教えてくれるかもしれない。そうして成績も上がってくれば勉強が好きになってくるんだよ」
「でも僕の先生は凄く怒るんだ。どうやって好きになればいいんだよ」
「怒る先生ほど君のことを心配しているんだよ。じゃあ先生が無理なら、まずはお父さんや、お母さんに取り組むことだね。さっきも雄介が、お父さんやお母さんの言うことが聞けなくて叱られるって言っていたけど、宇宙法則の第三条は『全てはバランスを保っている』だ」
雄介は、次々と出てくる宇宙法則に興味を持ちだした。
「アロン、バランスを保っているって何がバランスを保っているんだよ」
「この宇宙に存在する物は、表が有るから裏がある。善があるから悪がある。内があるから外がある。内と外、つまり家の中と家の外はバランスしているんだ。家の中でお父さんやお母さんに叱られているようでは、いつまで経っても家の外で先生から認められないね。家の中を頑張ってお父さんやお母さんに認められると、ほっといても外で先生から認められるんだよ」
「へー、そんなもんなんだ」
「雄介は地球の平和を実現する為に、まず家庭の平和から取り組んで、勉強も頑張って、地球人の代表にならないといけない。そのために勉強をしっかりしておかないと、人の前には立てないよ。学校の勉強は基本だ。知っていて当たり前のことばかり教えてくれているんだから頑張らないとね」
「だから、何で僕が地球人代表になるんだよ。訳が分からないよ」
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