第3話  学びたい、ただそれだけで道は拓ける

 学がスマホで検索すると、この地域にはIT関連の移行支援施設がないことが分かった。同時に、電車で4、5駅、先の発展している地域で、有名な施設が2つ—NとK—が、あることが分かった。

 この移行支援とは、精神障害者が、社会で生きていくスキルを、学ぶ所である。


 学がそこへ通うためには、居宅サービス責任者の丸さんや、支援員の総括責任者に相談し、許可を得る必要がある。そして何よりも、「学びたい」という強い熱意が、不可欠だ。


 今の環境で、紙折りの技術を磨いても、主な仕事は、単純作業か、重労働であり、それしか選択肢がない。


 しかし、学は社会で認められる技術を習得し、一般の障碍者と差別化できるスキルを身につける事が出来れば、体力の衰えた今であっても、その技術を、活かして、座ってできる企業に、選ばれる可能性が高まる。


 ——学びたい、その技術で身を立てたい——


 確かに、―NとK―のどちらを選ぶにしても、電車での通学は身体的に厳しく、金銭的な、負担も大きい。収支が合うのか? 計算する必要がある。


 現在の資金は約25万円。これでは足りないため、借りる選択肢も考えなければならない。どこで借りるのか、どのくらいの期間通えるのか。理想は半年間、通学し、その後、就労するシナリオだ。


 試算では、25万円あるから、半年の6で割って、月4.1万円のうち、工賃として稼ぐ1万8千円と、昼の食費の1万5千円を、引いて計算すると交通費と諸経費として約7千円を確保できる事が分かった。数字上では何とかやり繰りできそうだが、実際は厳しい。

 

 しかし、ある人がこう言った——「意思のある所に、道は通ず」。学がこの言葉の通り、強い意志を持って進めば、道は開けるはずだ。



 それでも、学の前には、まだ多くの課題が立ちはだかっている。支援制度の情報を収集し、使える資金を増やすことが大切……。


 さらに、通学の負担を考えると、健康面のことも、考える事が必要だ。毎日の移動に耐えうる体力をどう維持するか、休息の時間をどう確保するかも重要な課題となる。

 

 施設に通うことが決まった場合、カリキュラムや、学習内容を、最大限に活用する為の大まかな計画を立てる事も大事だろう……。


 また、通学することによって生じる新たな課題にも、柔軟に対応できるようにすることが重要である。予期せぬ出費や体調の変化にどう対処するか、事前にリスクを洗い出し、対策を講じておけば、困難に直面した時も冷静に乗り越えることができる。

 

 最も大切なのは、何度も繰り返すことになるが、学自身の「学びたい」「技術を、身につけて社会に出たい」という強い意志である。環境や状況が厳しくても、その意思があれば、困難を乗り越え、望む未来へと進むことができる。


 そして、このラインとは違う、もう一つの選択肢も見つかった。それは、健常者と肩を並べてPC教室に通うという、それも又、困難を伴う選択である。





 ただ、学の挑戦は始まったばかりだ。その一歩一歩が、「夢への道」を切り開く。この挑戦の先に、学が望む未来があることを、信じているからだ——。

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