薄氷の上で
紺碧蒼
プロローグ
「なあ、スケートやってみない?」
少年の提案に、春の風がその髪を揺らした。青空の下、日差しが少しずつ温かさを増す午後。公園にいた4人の幼子、3歳くらいだろうか、まだ小さい出で立ちの子供たちはそれぞれに反応を示す。
「スケート?」
「おう!最近始めたんだけど、すげぇ楽しんだ!」
一人の少年は、言葉のあとにしばらく黙った。少し大人びた遠くを見つめる瞳が、その思索の中で何かを探しているようだった。少し遅れて、穏やかな声が響く。
「面白そうだね…やってみるのもいいかな。」
その言葉には、どこかしらの確信が含まれていた。その少年の目の奥に見えるのは、軽やかな楽しさと同時に、どこか威厳を感じさせるものだった。
側にいた一人の少女も、元気よく言った。
「やってみたいな!帰ってお母さんに聞いてみるね!」
その明るい笑顔に、周囲の空気も和んでいく。
もう一人の少女は、肩をすくめるようにして答える。
「…考えとく。」
その冷静な言葉には、少しの興味と一緒に、無関心のような感覚も漂う。しかし、どこかでその心は動いているように見える。
少年はその言葉に微笑みながら答える。
「絶対気に入るって!!!お前らもやってみようぜ!」
その笑顔の中には、冒険を始めるような、軽やかな期待感が込められていた。無理なく流れるように発せられたその言葉には、確かな自信と意志が感じられる。
誰もがそれぞれの思いを胸に、きっとこの瞬間がどんな未来に繋がっていくのか、知らないままだった。
それから13年後。
彼らがそれぞれ、日本のスケート界の頂点を闘うことになることは、まだ誰も知る由もなかった。
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