第14話

ー百夜殺し百景:ナナミの場合ー

その3




”ブラーン…!”


やっぱりこんな音感なのか…。

これが耳に入る最後の音だわ。


終わったのよね…。

私は死んだ。

連中…、憎っくき99人を道連れにして…。



***



それはどのくらいの時間だったのか…。

とても短いようで、逆にえらく長いようにも感じた。

死んでるんなら、生きてたあの地獄のような世界での時間軸なんて、所詮存在しないだろうし…。


ここはどこ…?

周りは木ばかりだけど、私が首を吊った雑木林じゃないよ…。


私、地面に落っこちてるし…。

まあ、あの世ってのは、こんなものかもしれないけど。



***



私はとりあえず立ちあがった。

すると‥。


私の後ろでは、クヌギらしき大木が私を見下ろしてる。

どこかあの柳っぽいかな…。

しばらく私は、それを見上げてた。

”しばらく”の間…。


気が付くと、私の前に声をかけてるらしき人がいる。

オトコのヒト…?

それって、木なんだけど…、クヌギっぽい大木の…。

カレ…、ひょっとして…?



***



カレは、木の中にいた。

ちょうど私の頭あたりに目があったわ。

その部分…、まだら模様になってて、木の幹がそこだけドンと太くなってるの。


”マダラ、フクレ、クニギ…”


カレはまず、この言葉をくれた。

さらによ!


”ソレ、ウメロ…”


それとは…、クヌギの木の根元にあった。

カプセル…、が二つ…。



***



私は言われる通りにした。


”オマエ、イキロ…”


私はこの瞬間、この人の言ってる意味がわかった。

同時に、心の底深くも透けて見えたわ。

そういことなの…‼


やっと巡り合えた…。

あなたはステキよ…❢


二つのカプセルを木の根元に埋めた私は、気が付くと、そのクヌギに抱き付いていた。

膨れた幹のまだら痕に、私のふくよかな胸を押しつけて…。


愛しい呪い主様…、やっと結ばれた。

嬉しい…。


故鬼島則人と久留田ナナミは互いの狂気を媒体として、これより、深く結ばれることとなる…。






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