【第二章】海

次の日は、ベッドがガタンと揺れる音で目が覚めた。

君のベッドは空で、机には昨日のパズルが散らばっていた。

少し運転が荒い。君が運転しているのだとすぐわかる。

「おはよう。早いな。」

「おはよう。昨日カーテン閉め忘れて日光で起きちまったんだよ。」

「ふーん…料理したのか?」

フライパンの中には、君が作ったであろうベーコンと目玉焼きがあった。

「うん。食べろよ。」

愛情込めたんだ、とふざける君を無視し、私は昨日買ったパンを焼いた。

「君が運転してるの珍しいな。ありがとう」

「お前がいっつもやってるからな。」

「君がずっと寝てるからだろ…」

ため息を吐き、すこし冷めてしまったベーコンと目玉焼きをパンに乗せて口に入れた。

「今日はどこへ行くつもりだ?」

「昨日八百屋で貰った古い地図を見たんだ。この方角に行けば海がある。」

「海…」

突然頭痛が走った。

「大丈夫か…?海、やめとくか。」

「ああ…やめよう。」

「…ごめん」

「いいよ。君のせい…ではあるかもしれないけれど。」

全部、君のせいだ。

「…少し先に花畑があるらしいんだ。行ってみよう。」

「ああ。」

君は進行方向を変え、丘の方へ車を走らせた。

「ごめんな、わたしが、君を置いていったから。」

「…」

「自分勝手だった。本当、ごめん。」

君は、本当に苦しそうな顔をしていた。3年の付き合いで初めて見た顔だった。

…この世界では、3年以上だろうが。

「…自分勝手なのが君の長所だろ」

「…ふはは、そうかもな。」

すこし穏やかになった君の横顔はとても綺麗だった。

でも、それを君に伝えれば良い思いはしないだろう。

そう思いながら、私は目を伏せた。

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