第23話 内緒話 1
*** 日下部 沙也加 視点
猫のミーちゃんが、人間の姿になった。
友兄に異世界の話を聞いた時は、熱で頭がおかしくなったんじゃないかって思った。
現実的にそんな事あるはずがない。
目の前で、友兄が何もないところからポーションを出して見せた事で、一応納得はしたのだけど。
ミーちゃんは黒髪ロングの美少女で、神秘的な金色の瞳をしている。
見た目は大学生くらいね。
スタイルが良くて羨ましい。
「ミーシャ、ちょっとくっつきすぎだよ」
「良いじゃろ別に。友樹はワシの事、愛しておるのじゃろう?」
「い、言ったけどさ…」
リビングのソファで、友兄とミーちゃんがいちゃいちゃしている。
いつもこんな事しているの?
「お二人さん…わたしも一応いるのだけど…出来れば二人っきりの時にお願いします」
「ああ、すまんの嬉しくてつい。この家だとリラックスできるものでな」
ミーちゃんは、友兄にすりすりしている。
「ミーシャは、猫の時の癖が抜けないみたいなんだよね。ってあの…ちょっと…変な気分になるんだけど…」
友兄の顔が、みるみる赤くなる。
「そうか?何ならこのまま一緒にベッドへでも…」
ミーちゃんがとんでもないことを言い始めた。
猫だから、そういう事にあまり抵抗が無いのかな?
「わ、わたし、自分の部屋に戻るね?」
全く、両親が帰ってきたらどうするのだろう。
両親は、仕事で長野に行っていて不在だ。
夏休み頃には帰ってくるって言っていたのだけど。
流石に居たたまれなくなり、部屋を出ようとドアノブに手をかけた時。
「たっだいまー」
陽気な声が玄関に響いた。
お母さんの声だ。
「あれ?母さんの声だ。帰ってきたのかな」
「母上か。久しぶりじゃのう」
吞気にしているけど、今のミーちゃんを見たら卒倒するかもしれない。
お母さんも結構現実主義者だったりする。
昔は教師をやっていたらしいから。
「ミーちゃん。猫に戻った方が良くない?お母さんを驚かせちゃうよ」
「このままでいいよ。いつかは言わないとだしね」
「誰かお客様でも来ているの?」
トントンと廊下を歩く足音がして、リビングの扉が開かれた。
「あら」
お母さんは、目を見開いて驚いている。
友兄とミーちゃんを交互に見て、口元が緩んだ。
「いらっしゃい。友樹のお友達かしら。キレイな人ね」
「母さん、この人は…」
「この姿で会うのは初めてじゃな。ワシは黒猫のミーちゃんで…」
わたしは思わず両手で、ミーちゃんの口を塞いだ。
「んーーーモゴモゴ」
「こ、この人は友兄の友達でミーシャさんって言うんだって」
「あらまあ、外国の方なの?沙也加ともずいぶん仲良しなのね。ゆっくりしていってね」
パタン。
お母さんは再び廊下へ行ったみたい。
おトイレかな。
「沙也加なにするのじゃ。今更、隠しても仕方がないじゃろうに」
「お母さんに、異世界とか言ってもきっと信じてもらえないわよ。それより、これからどうするかよねえ」
「ミーちゃんが黒猫に戻れば問題ないんじゃ?」
友兄が、とんちんかんなことを言っている。
「あの…お母さんに隠し事はないんじゃない?悲しくなっちゃうわ」
「「「え?」」」
何処かへ移動したと思っていたら、わずかにドアが開いていたみたいで、わたしたちの会話を聞かれていたみたいだった。
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