子犬
健さん
第1話
高校時代からの親友岡本英二と久しぶりに会った。俺の名は山口たかし。35歳。独身。英二も同じくまだ独身な身だ。ここは、いつも行く居酒屋。とりあえずビールと枝豆を頼んだ。英二が一口ビールを飲んだあと、言った。「たかし、今度の日曜日何か予定あるか?」「いや、特にないけど。」「それじゃあ、山梨県の〇×トンネルに行ってみないか。」俺は枝豆を食べながら、「たしか〇×トンネルは有名な心霊スポットじゃないか?」「よく知ってるじゃん。俺さ前から行きたかったんだけど、一人じゃ怖いじゃん。」と英二が言う。そのうち頼んでいた唐揚げが運ばれてきた。「じゃあ、行くか。ただカメラの撮影はやめたほうがいいな。」「どうしてだ?」「あの有名な霊能者のエバラ氏が”霊”が怒るから写真撮影はやめたほうがいいと、何かの番組で言っていたよ。」そして、日曜日。俺の車で行くこととなった。そして何とか無事に約3時間かけて到着した。やはり有名な心霊スポットだからだろう、もうすでに何人かの人がいて”禁じ手”の写真や動画の撮影をしていた。そのトンネルの長さは2000メートルつまり2キロの長さだ。入口の立て看板に書いてある。そしてよく見てみると、その上は、墓場である。本当に心霊スポットっていう感じだな。すると英二がスマホをいじりながら言った。「昔この場所は処刑場だったらしくあのエバラ氏の話だと落ち武者の霊が見えるというし、また自殺者が何人かいるらしいよ。」「なんだかなぁ、入る前から嫌になっちゃたなあ。」「よし、行くぞ。」英二が先に行く。中に入ってみると、夏なのに冷凍庫のように寒い。空気も重いし。湿気からかところどころで天井から水滴が落ちてきて頭に当たると、ゾクっとする。なので、歩いていると、いくつも小さい水たまりができていた。先頭に5~6人いるのだろうか?キャー、キャーなどの声がする。俺たちは半分くらい来た所で引き返した。「まあ、たいしたことないじゃないか。」と俺がうそぶくと、「日中だからな。夜だったら、こんなもんじゃないぜ。」と英二が言う。9時頃出てきたのでもう12時を過ぎていた。俺は時計見ながら、「せっかく山梨に来たんだから、ほうとうでも食べにいこうぜ。」そして、俺たちは甲府の中心街のほうとう専門店に入った。(いらっしゃいませ~)女性店員が麦茶を3つ持ってきた。すぐそそくさと忙しそうに奥に入っていった。「何で3つなんだ?」と英二が言うと、(ほうとう3つでいいですね。)と店員さんが言うと、「いや、2つでいいです。」すると、その女性店員が出てきて、(あれ、入って来た時、女性の人もいましたよね?)と、怪訝そうな顔で言う。「元々2人ですけど。」と俺が少し不貞腐れて言う。(ごめんなさい、私の見間違いかしら。2つですね。少々お待ちください。)俺はすかさず、「ひょっとしたらトンネルの霊がついてきちゃったんじゃないか?」と冗談ぽく言う。「脅かすなよ。背筋が寒くなってきたよ。」そして、ほうとうを食べ終えて店を出て甲府駅前の武田信玄公の前で写真を撮ることにした。俺が英二を撮り英二が俺を取る。「うまく撮れたなあ。武田信玄やはり勇ましい。」そしてまた3時間かけて帰宅の途に着いた。英二を自宅まで送り、自宅に着いて、ふっと、後ろの座席を見てみると、何やら、湿っぽい感じがしたので触ってみるとやはり湿っぽかった。(え?何で?)俺は疲れていたので、たいして気に留めずその日は寝た。2,3日してから英二から電話がきた。「あの日トンネルに行った日から昨日まで金縛りや、何か見られてる感じがしてどうにも気持ち悪いんだよ。」と、英二。「そうか。明日仕事終えてから家に寄るよ。」次の日、英二の家にいくと部屋に子犬がいた。「なんだ、お前犬を部屋で飼っているのか?」すると、子犬を抱っこしながら「昨日の夜コンビニに買い物に行ったのだが道の端っこによく見ると、この子犬が具合が悪そうにうずくまっていたので、死んでいるのかと思ったら、まだ息していたので、連れて来ちゃった。とりあえず、牛乳を与えて、毛布にくるんでやった。でも、ダメかなと、思ったが今朝元気になってよかったよ。たぶん、小雨も降っていたし、あのままだったら死んでたなこの犬。」子犬の頭を撫でながら英二が言う。「そうか、お前のところは、実家だからな俺のとこだったら、アパートだから飼えないけど。それで、金縛りは相変わらず続いているのか?」「うん、あるよ。目も開かないし、声出すこともできないんだよ。でも、上に乗っかている感じで、目が開かないのに、髪の長い女性なんだよ。見えるんだ。なんとなく。」「ひょっとしたら、マジで〇×トンネルの霊じゃないのか?食堂でも店員が女の人も一緒にいたって言っていたじゃないか。」英二は青い顔しながら、「やっぱりそうなのかな?行くんじゃなかったなあ。」「知り合いに霊能者がいるから、有名なエバラ氏じゃないけど、相談してみよう。」「頼むよ!」そしてこの日は帰った。また、4,5日経ってから英二から電話が。「英二、その後も相変わらずか?電話しようと思っていたんだけど、明後日の日曜日霊能者のところに行こう。話してあるから。」するとか細い声で、「犬死んじゃったよ。」「え!ほんとか!?元気だったのにな。」「元気になったのはいいんだけど、夜おそくなると吠えるんだよ。しかも、壁に向かって。両親は、うるさいから、外で飼えと言われるし。」「多分その”霊”じゃないか?犬とか猫は見えるというから。よく、犬や猫見てると、とんでもないところ見てたりしてるじゃん。あれって霊を見てるらしい。何かの番組でエバラ氏が言っていた。いつ死んだんだ?」「一昨日に目がさめたら、口から血を流して死んでいたよ。裏の山に行って穴掘って供養したよ。しかも、その日の夜から全く金縛りがなくなったんだ。」「ひょっとしたら、子犬がお前の”身代わり”になって死んだのかもな。命たすけてくれたお礼に。」電話口で英二は泣いていた。そして話を終えて電話を切り、俺は何気なくスマホを手にとり、甲府駅で武田信玄公の前で撮った英二の写真を見てみた。すると、撮ったあと確認で見たときは、写っていなかったが、よく見ると、英二の横に髪の長い女性が写っていた。(完)
子犬 健さん @87s321n
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。子犬の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます