第3話

 右の洞穴はすぐに行き止まり、左の洞穴は若干の傾斜で下へと続く。夜中にひとりで起きてしまった自宅の階段を重ねて私は躊躇っていた。生ぬるい風がやっと乾いた髪を触った。

 将来の不安、未来への絶望、最悪な現実をリーサは一息に話した。私が未だ勇気が出ないでいると、ぬかるんだ地面が退いて心臓を浮かせた。リーサが下敷きになって下り坂が迫ったかと思うと私は洞穴の奥深くへ呑み込まれてしまった。


 落ちた衝撃から閉じた瞼をゆっくり開けると、そこには見慣れた私の家があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

munikisu @munikisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る