3.
「時が終わるってどういうことなのかな」
道をのぼりながら僕は誰にともなくつぶやいた。学校帰りの坂道である。前を歩いてたシューヘイは振り返って四角いめがねの顔をしかめた。
「『何を言ってるんだこいつは』って言いたいんだろう?」
僕が自嘲気味に吐き出すと、
「そうでござるな」
といつもの時代がかった答えを返してきた。
「少しくらいは遠慮とか気づかった言い方できないかな」
「竹馬の友であるシンジくんにそのような物言いは不要でござろう」
「ちくば……ってよくわからないし」
「幼いころからの友人ということでござるな。それはさておき時が終わったら、終わった先には時がないということでござるから、すなわち『無』でありましょう。そもそも宇宙がはじまった時には、時間経過も空間も何もなかったとも言われますし」
「じゃあ何もなくなっちゃうってこと?」
「物事が変化する過程を便宜上『時』と名付けたのでありますから、時が終わってなくなったということはすなわち、それ以降何も変化しない瞬間というか『瞬』ですらない絶無の空間的断面に到達するということですな」
「僕にはさっぱりチンプンカンプンなんだけど」
「我が輩が気になることとしては『時が終わる』なんて気の利いたことをなぜシンジくんが思いつきえたかということでござるな――誰かから、その言葉を聞いたのでござろうか?」
「えっと――」
僕はそれを言うかどうかちょっとだけ迷った。普通なら信じてくれないようなことだったからである。けど相手はあのシューヘイだ。
「――カナエかな」
意を決して僕が小さくそう言うと、
「カナエ?――」
シューヘイはめがねの奥の黒い目を細め、
「――あの【時間城】の?」
と答えた。
「違うよ上水道だよ。そんな風に呼ぶのはシューヘイだけだよ」
そう言って僕は笑った。
→https://kakuyomu.jp/works/16818622174491940456/episodes/16818622174492037238
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