文明が崩壊した世界では、ダンジョンクリアで神様から王権が貰えるけど俺はそれより神を超えたい~第三次世界大戦は神の怒りで終了し人類はこん棒と意志で闘うようです~

江戸バイオ

神話の世界

第1話 第三次世界大戦は神の裁きによって終わる

世界は不平等に満ちていて。等しく皆に自由があるはずなのに不自由で。


戦争はなくならないし貧困やらなにやらの問題に溢れていて。


人間ってのはいつまでも何か問題を抱えてないと生きていけない生物なのだろうか?


そんなことを今朝のネットニュースを見てからぼんやりと考え続けてる俺は、少し疲れているのかもしれない。


いや、疲れているのは世界の方か?


先日よりずっと騒がれていた「第3次世界大戦勃発か!?」という話題がいよいよ現実のものとなるのだから。


俺こと最上雅人は、っていうか今日本に住んでいるほとんどの人は戦争なんて未経験だろ。戦争を知っているのは高齢者のなかでも少ないはずだ。


世界中を見渡せばどこかで戦争が起きてることは知識としては知っている。でも日本が巻き込まれることなんてないと思ってた。


対岸の火事って思ってたんだ。でも皆そうだろ?戦争の話題がネットで騒がれる時もあるけど、芸能人の不倫だのなんだのですぐに塗り替えられる。


そんな程度の話題のはずだったんだ。ところが今朝のニュースでは自衛隊の出動がどうとか隣国がどうとか随分と深刻で。


本格的に日本が戦争に巻き込まれることになったってことだがまるで実感が湧かない。だって日常と変わらず俺は出勤したし。


会社が休みになるわけでもなく日常は続いているんだ。いつもと違うのは、なんとなくそんな話題が続いて嫌気が差したってことくらいか。


今日もはっきりと月が見えるくらいにはいつもと同じ遅い時間のご帰宅ですよ、ってことも十分にイヤなことではあるのだが。



そんなことを考えながら歩いていると踏切に捕まってしまった。しかもちょうどカンカン鳴り始めたとこ。結構長いんだよなこの踏切。ツイてない。


そうか、色々考えてたが俺にとって日本が戦争に突入したところで、踏切に捕まることの方が大きいニュースって程度には他人事だったんだな。


ふと目線を上げると踏切に捕まったのは俺だけでなく若い女性も捕まってた。変に思われたくもないのでスマホでも見るふりして乗り切るか。


スマホを見ると戦争絡みのニュースばかりで気が滅入るんだが女性と二人で踏切待ってるのも気まずい。最近はこんなことまで気にしなくちゃいけないんだから生きづらい世の中だよな。


ちょうどスマホを取り出そうとしたところでスマホが落ちていくのが見える。女性が落としてしまったようだ。


戦争なんてのが起こったんだ。何かショッキングなニュースでも流れていたのだろうか?何故か立ち尽くしているので思わず声を掛けてしまう。


「スマホ、落としましたけど……大丈夫ですか?」


反応が無い。踏切の音に電車の音もある、聞こえないのか?あまり大声を出すとそれこそ不審者と思われないだろうか?


と、今度は俺のスマホからアラート音が響く。画面を見ると…


地震じゃない!ミサイル!?


ミサイルでアラートが作動することは知ってたがいざとなるとどうすればいいか混乱しちまう。


万が一の近くでの爆発に備えて飛来物から頭を守るんだっけか?わからん!とにかく伏せよう!!


混乱しながらも地面に伏せて頭部を手で覆うようにしてスマホを目の前に置き続報を待とうとするが、そこで気づく。


そう言えば女性はどうなった!?


少し顔を上げるとどうして良いのか分からず周囲をきょろきょろと見渡している女性が見える


「伏せた方がいい!ミサイルだぞ!?今は周りを気にせず伏せて頭を守って!!」


女性にとっては周囲にいる唯一の人である俺が伏せているからか、大声にびっくりしたのか。分からないが伏せてくれたところで再びスマホに目をやる。


「詳細は不明ですが某大国から発射されたミサイルが大国に着弾したとの情報が入りました!日本にも向かっている恐れあり、国民の皆さんは非難を開始してください!

一部情報では複数の国から大量のミサイルが向かっているとのことです!着弾予測は日本各地です!これは訓練ではありません!直ちに避難を開始してください!!」


スマホからじゃない。今度は街中のスピーカーからとんでもない内容の情報が耳に入って来る!なんだって!?ミサイルが大量に!?


昨日までもきな臭いニュースはあった。さっきまでは他人事だった。急に訪れた非日常に頭がパンクしそうだ。それよりも死の恐怖を実感することになるとは思ってなかった。ダメだ、伏せていても震えが止まらない!



「安心したまえ人間諸君。君たちは滅亡させない。絶望はするかもしれないがね」




突然、スマホからか?音声が聞こえてくる。男性とも女性とも思える不思議な声だ。


しかしスピーカーからは大音量で今もミサイルの情報と避難勧告がけたたましく流れている。踏切の音だってある。なぜこんなに明瞭にスマホからの音声が拾えるんだ?


妙に冷静に考えられることには違和感を持つ余裕は無かった。目の前には信じられない光景が映し出されていたから。


いつの間にか踏切を通過するはずだった電車が目の前で停止している。


何故電車が止まっている?そんなことより電車の窓に映っている光景はなんだ?


電車の窓一面は真っ黒で、そこに真っ白な人型の影が浮かんでいる。異常だ。ミサイル以上に、訳が分からない!



「改めて人間諸君、挨拶と状況の説明をしようじゃないか。私は君たちが言うところの神とでも思ってくれればいい。私が顕現した理由だが、仏の顔も三度まで、といったところかな?」


その声が聞こえてきた時に分かった。この声は耳に直接響いているかのように聞こえている。発信源は不明だ。


なにせ画面に映っている白い影は手を広げたような姿ではあるが口は見当たらない。のっぺらぼうだ。でも何故か理解出来る。コイツが喋っていると。



「あぁ、地球のすべての人間たちよ、お前たちはどこまでも愚かだったのだな。今しがた君たちは自分たちを滅ぼすほどの悪意をばらまいた。核ミサイルだったかね?あんなに大量にバラまいたら君たち人間だけじゃなくてこの星の終わりだったよ。私が介入しなければ世界は終わっていたよ?なので私が終わらせてあげよう。

 うん。まずは沙汰を下そうじゃないか。そうだな、今回のように星を壊されてはたまらん。そうだな、電気を禁止しよう。たった今から電気は使用不可だね。発電の理そのものを世界から無くすとしよう。他にも余計な機械は停止しておくよ。

 君たちはもう一度神話の世界からやり直したまえ。これは罰ではない。救済だよ。それと混乱のさなかで争いを続けられても面倒だ。共通の敵を用意してあげよう。そうすれば君たちは協力し合えるのだろう?大勢が死ぬかもしれないが全滅よりはマシだろう?これで今回の戦争は終わったんだ。せいぜい生き延びてくれたまえよ」



…………なんだ?いったい今俺は何を聞いているんだ?現実感が全くない。なのに何故か白い影を信じようとしている自分がいる。


ミサイルアラートまでは非日常だった。だが今は非日常すら生ぬるい。超常現象の中にいるのか?だが、神様がそう言うならそうなのか……!?





…………違うっ!!


なんだ!?なにが救済だ。電波ジャック?世界中が戦争という不幸に突入した時になんて悪戯を……いや、電車の窓はジャック出来ない、よな?


それに街から明かりが消えている。すぐそばにあるはずの駅もホームが見えないほどに真っ暗だ。スピーカーの音も、踏切の音もアラートも何も聞こえない。


それにあの影は最後何を言っていた?共通の敵?


敵ってなんだ?宇宙人やゾンビでも出てくるってのか?


「あの……、あれ………逃げないと、、まずい、んじゃ!?」


女性が駅の方を指差し逃げるように勧めてくるが暗くて何も見えない。この人には何か見えているのかっ!?


「暗くて何も見えないっ!あなたには何か見えてるんですか!?」


「はっきりとはわかりませんが、犬?狼?わかりませんがナニカがたくさん。駅の方に!逃げないと!!」


目が暗がりに慣れきっていないが見えなくても逃げる必要性は俺にも理解出来た。


駅の方から悲鳴が聞こえて「ばけもんだぁあ」「きゃぁああ!!」きたからだ。


だが、逃げるといってもどこへ?


いやとにかく駅から離れないと!あそこは危ない、さらにだ。


怒号とともに電車の窓が少し開かれそこには中から脱出しようと人が押し合う光景もある。


誰も冷静じゃいられない。俺だってそうだが、とにかくここから離れないと!


「とにかく!こっちへ!」


女性に手を引かれ踏切から離れていく俺は、動かなくなった電車から聞こえる人々の怒号を背にする。



空に浮かぶ月だけがいつもと変わらず、僅かな光を与えてくれていた――


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

あとがき


拙作をお読みいただきいただきありがとうございます。

第7回ドラゴンノベルス小説コンテスト長編への応募作です。

全30~40話、毎日1話投稿(時々2話投稿)一カ月ほどお付き合い頂けましたら幸いです

宜しかったら、面白かった、続きが気になるという方は♡や☆、フォローをお願いいたします。

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